哀愁しんでれらの映画専門家レビュー一覧

哀愁しんでれら

TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2016でグランプリを受賞した脚本を土屋太鳳主演で映画化。児童相談所勤務の小春は、一晩で怒涛の不幸に遭い、全てを失ってしまう。人生を諦めようとしていた彼女だったが、8歳の娘を男手ひとつで育てる開業医・大悟と出会い……。共演は「mellow」の田中圭、キッズインスタグラマーのCOCO、「ジオラマボーイ・パノラマガール」の山田杏奈。監督・脚本は「3月のライオン」「ビブリア古書堂の事件手帖」などの脚本を手がけた渡部亮平。
  • 映画評論家

    北川れい子

    趣味のワルい、そしてまったく笑えないダーク・コメディで、そういう意味では面白くなくもない。一夜にして身一つになってしまったヒロインが、一カ月後には妻を亡くした裕福な医者と結婚、さあ、幸せよドンと来い、と思いきや、8歳の義理の娘がとんでもない小悪魔で……。8歳のその小悪魔ぶりは、いくらフィクションでも気色がワルく、演じているCOCOが達者なだけに逆にハラハラしてくる。渡部監督は脚本家としても実績を積んでいるが、今回は子供をダシにして悪ノリか。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    幼少期にトラウマを抱えた女性が「王子様」との結婚に幸福を見出そうとする前半は、ありきたりな不幸の光景をなぞるだけで正直退屈。もちろんそこでの「絵に描いたような不幸(幸福)」がのちの裏返しへの伏線となっているわけだが、中盤以降、「悪い種子」風サイコ・サスペンスが展開されるに至って、その背後にあるべき主人公のドラマを深めていなかったことが災いし、ついぞジャンル映画的な脅かしの域を出ない。怖さを他人事で終わらせないためのもう一押しがほしかった。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    魅力と安定感の土屋太鳳、メリハリの田中圭、決まりすぎくらいの撮影と美術、そして野心満々の渡部監督。COCOを筆頭に子役たちまで挑むようにスキがなく、くっきり写っている。これを娯楽として楽しむ人も、社会の病的な暗部への批評あるいはその毒に対抗する毒として受けとる人もいるだろうが、待ってくれと言いたい。ヒロインが救われるように入った「幸福」からの脱出を、その過去の体験からの思いが阻む。周到にそう作ってある。作ってあるだけという虚しさが全体にある。

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