出櫃(カミングアウト)中国・LGBTの叫びの映画専門家レビュー一覧

出櫃(カミングアウト)中国・LGBTの叫び

自分のありのままの姿を受け入れてもらいたいとの思いから意を決して親と向き合う2人の若者を追ったドキュメンタリー。自分がゲイであることを誰にも言えずに過ごしてきた男性と、カミングアウトするも10年以上も親に受け入れられないレズビアンの女性に密着。日本を拠点に、主にテレビドキュメンタリーの演出に携わる中国出身の房満満が監督を務める。東京ドキュメンタリー映画祭2019短編部門グランプリ受賞作。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    親は50人や100人子供を産んで育てれば親としてプロだろうが、せいぜい多くて5人程度。親は「親」としては一生アマチュアだ。一方子供は、全員プロの「子供」。親はどこまでも不利な存在なのだ。世界中ダブルバインドの価値観が横行している。テレビやマスコミ、他人だったら容認できるが、身内では決して非容認。カミングアウトで引き裂かれたどの親子関係の亀裂にも宙づりの絶対愛が残る。衝撃的なシーンばかりが目につき、監督自身が見えてこないのが作品として弱いか。

  • フリーライター

    藤木TDC

    2019年にNHK BS1で放送されたドキュメントで54分の短尺。中国の同性愛者二名の親へのカミングアウトをシンプルに撮影、出演者がカメラの前であけっぴろげに感情を見せるのが魅力。一方、見せ場はそれのみで中国社会全体のLGBTs理解度や当事者団体による行政へのアプローチに言及しないのは映画として不足だ。とはいえストレートな内容ゆえ現実に目の前にあるカミングアウト問題でひとり悩む当事者への励ましや参考にはなろう。そのために劇場公開するのだろうし。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    取り上げる人材が二人という質素な作りがもったいなく、映画の規模に拡大したものが観たい。親にカミングアウトした際、同性愛者に対してありがちな誤解がぶつけられる様子を、カメラが余すことなく捉えているのは監督の引きの強さだ。「根気よく同性愛を治していこう」という無理解や、親戚の手前、嘘をつくよう求められる典型的な反応。中国に限ったことではない、要所を押さえた親のリアクションのバリエーションが観られる。監督と登場人物たちの距離感も気になる。

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