名も無き世界のエンドロールの映画専門家レビュー一覧

名も無き世界のエンドロール

小説すばる新人賞を受賞した行成薫による同名小説を「累 かさね」の佐藤祐市監督が映画化。強い絆で結ばれた幼馴染みのキダとマコト。2人は10年もの歳月をかけて、表と裏それぞれの社会でのし上がり、ある女性に近づきプロポーズをしようとするのだが……。出演は「AI崩壊」の岩田剛典、「十二人の死にたい子どもたち」の新田真剣佑。
  • 映画評論家

    北川れい子

    目的のためなら、手段を選ぶ――。その目的とは、そして手段とは――。それにしても、仲良し3人組(男子2人に女子1人)の青春ものと思いきや、いつのまにか立場の違う男2人の友情物語に移行。が真の目的は手間、ヒマかけた“ある企み”にあり、何やら、ひと頃、はやった“ハーレークインロマン”の世界。ともあれ説得力はともかく一粒でいろんな味のする変わり玉のような映画で、すべてが明らかになる終盤は、確かにえーっ。かなり暗い情熱に満ちた青春秘話だが、一見の価値あり!?

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    「キサラギ」の佐藤祐市監督ということで悪い予感がしたが、頭で考えた話(原作)を見映えのするキャストを使ってまとめてみせた、悪い意味での職人仕事。迫真も感動も定型通りに用意されてはいるが、結局はどこかで見たような展開やセリフが散発的に繰り出されるだけなので、絵空事がリアルな実感となってわき上がってこない。主題歌からなにからすべてがお膳立てされた予定調和のなかで、現代の名手・近藤龍人の陰翳を際立たせた撮影が、かろうじて映画の彩りを保たせている。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    佐藤監督で、カメラは近藤龍人、衣装は宮本まさ江。工夫した画作りを楽しみたいところだが、大時代すぎる話で呆れた。装置的には現在の風景を、愚かな執念とその相棒が今風の顔で歩いている。ひとりの異性が命がけの仕掛けを用意するほどの目標になることが納得できないし、復讐譚だとしたら不可欠な痛快さとカタルシスが訪れない。原作、行成薫。韓流に対抗できそうな、その物語への野心には敬意を抱くが、一政治家の破滅程度で何が終わるというのだろう。命、虚構でも大切に。

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