女たち(2021)の映画専門家レビュー一覧

女たち(2021)

「海辺の映画館 キネマの玉手箱」などを手掛ける奥山和由が製作総指揮を務め、女たちの生き様を見つめたドラマ。40歳手前の独身女性・美咲は、母の介護をしながら学童保育所で働いている。娘を否定し続ける母に、心の奥底で認めてもらいたいと願うが……。出演は、「罪の声」の篠原ゆき子、「あいあい傘」の倉科カナ、「お終活 熟春!人生、百年時代の過ごし方」の高畑淳子。監督は、「ふゆの獣」の内田伸輝。
  • フリーライター

    須永貴子

    かつて父が自死した主人公が、要介護の毒母になじられ、男に裏切られ、親友が急死し、職を失い、追い詰められていく。風呂敷を広げに広げたところで、おいしいはちみつが、母と娘の長年にわたる確執を雪解けに導き、ぐしょぐしょに泣いて叫んだ女たちが、あははうふふと幸せそうに笑い合い、エンドロールへ。この映画には理屈がなく、感情しかない。資料を読んだら案の定、脚本の「余白」を演者に丸投げしたらしい。この内容にこのタイトル。製作者の女性観が透けて見える。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    美咲はつらい。40歳独身、母を介護しながらの学童保育所勤め。非正規だろう。結婚するつもりの男が既婚だとわかり、先方の家庭に乗り込むが泥棒に間違えられて警察に捕らわれる。ついてない。バカだったと唇を?むしかない。生きづらい女性たち。生きづらいのは男も同じだが、女性だと余計につらそうだ。雨の中ワインを飲みながら死んでいく養蜂家の親友の方が、幸せそうに見えてくる。しんどい映画なのに、むしろホッとする。かつては、こんなまっとうな映画がいっぱいあった。

  • 映画評論家

    吉田広明

    主人公の女性には呆れるほど次々と不幸が襲い掛かるのだが、重要な父の自死と親友の養蜂家の自死についてすら、前者については原因曖昧、後者は鬱の彼女に偶々かまっていられる状況ではなかったというだけ(フラッシュバックでの死の描写もあざとい)で、彼女の責任とは言えない。要するに彼女の不幸は内発的なものではないため、彼女がそれを克服するにしても、それは彼女が自分自身と闘う姿として見えず、為にする設定にしか見えないのだ。脚本段階での練り上げが圧倒的に不足。

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