NO CALL NO LIFEの映画専門家レビュー一覧

NO CALL NO LIFE

壁井ユカコの同名小説を映画化したラブストーリー。高校3年生の夏。携帯電話に残された過去からの留守メッセージに導かれ、佐倉有海は学校一の問題児・春川と出会う。たちまち恋に落ちる2人だったが、やがて時を越えた留守電の真相が明らかになり……。ダブル主演を務めるのは、「10万分の1」の優希美青と『ウルトラマンタイガ』の井上祐貴。監督は、中編「溶ける」が第70回カンヌ国際映画祭シネフォンダシオン部門(学生部門)に出品され、注目を集めた新鋭・井樫彩。
  • 映画評論家

    北川れい子

    灯台、花火、ホタル、赤い傘、そして雨などをアクセントふうにちりばめた、重苦しい令和版の“青春残酷物語”。ホリプロ60周年の記念映画に、どうしてわざわざ、出自や状況に自虐的な男女高校生の話を企画したのか不明だが、主役の若い俳優たちをアピールするためだとしても、ちょっとイタダケない気も。いじめや、家庭内暴力、勝手な親に育てられた子供の話は、今や青春映画の定番でもあるが、主演2人の迷走、暴走は観ていて痛すぎツラすぎる。カメラワークには感心。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    孤独な魂が寄り合うことで起きる残酷な共鳴。この題材に井樫彩監督、適任と思った。主人公は「溶ける」の道田里羽や「真っ赤な星」の小松未来と同じく、心に埋めがたい欠落を抱えた少女だが、井樫監督は単にそのように設定されているからという前提から出発するのではなく、優希美青自身の内側から表出した言葉や表情をすくいとることでそれを表現してみせる。早坂伸のキャメラが、その微妙なうつろいとともに、孤独の投影としての風景をニューシネマ的な感度をもってとらえている。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    青春映画。どこかでナチュラルを大事にしてほしいが、優希美青演じるウミも、井上祐貴演じる春川も、犬飼貴丈演じる航佑も、虚構の人物となるのに精一杯で、存在感が希薄。「バカだし、ガキだし」の若さに夢を感じさせない。この作品だけの罪ではないが、メイクが全体に嘘っぽい。その上、アクションのつなぎがよくない箇所も。名手早坂伸のカメラで、井樫監督、意欲的な凝り方もときに見せるが、筋立て上の問題だけでなく、ウミと春川がヒロインとヒーローになる瞬間を逃している。

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