ウルフウォーカーの映画専門家レビュー一覧

ウルフウォーカー

過去三作がアカデミー賞候補になったカートゥーン・サルーンが、アイルランドの伝説を題材に作り上げたアニメーション。オオカミ退治のハンターを父に持つロビンは、人間とオオカミが一つの体に共存する“ウルフウォーカー”のメーヴと友だちになるが……。声の出演はNetflix「クリスマス・プリンス」のオナー・ニーフシー、「オデッセイ」のショーン・ビーン。監督は「ブレンダンとケルズの秘密」、「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」のトム・ムーアがロス・スチュワートと共同で務めた。
  • 映画評論家

    小野寺系

    カートゥーン・サルーンの、ケルト3部作完結篇にあたる。他の作品同様、シンプルなシナリオで伝説を描いているので、やや単調な印象を持ったし、今回はとくに分かりやすい悪役の登場によって勧善懲悪の価値観に収斂し過ぎてしまっている。多様性など現代的な問題がテーマとなっているが、同スタジオの「ブレッドウィナー」の方により切実さを感じた。とはいえ3DCG全盛の時代に、平面的な絵のレイヤーを幾重にも重ねることで新しい映像世界を作り上げているところは素晴らしい。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    アニメを見るときテーマやストーリーに引けを取らないくらいに、CGIなどを含めた技術に関心がいき、高度な先端技術を駆使していればいるほど完成度が高いといつの間にか感じていた自分の錯覚を、この映画は気づかせる。色彩の美しさに細やかな描線が、人の呼吸に合う動きをしている。画面の中で美しい映像が躍動するファンタジー&アドベンチャーは、もちろん美しいだけに終わらない。特に後半、人の絆や自然と人間の関係など、いま大切にしたいことを優しい画面が語りかけてくる。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    時にパースが歪むデフォルメされた絵柄は可愛らしさと不気味さが同居を果たし、動きが滅法リアルな鷹、カマボコみたいな愛くるしい羊、本作の主人公である狼と、動物がみな素晴らしく、物語もファンタジックな展開の中に親子愛や人間の傲慢さへの警鐘、勢いあるアクション等が美しく配置されており、アートと娯楽の両方面から完成度の高いアニメーションであることは間違いないが、野暮を承知で書くと人間VS狼の対立構造において映画が狼サイドに肩入れしすぎなのではないかとも。

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