トルーマン・カポーティ 真実のテープの映画専門家レビュー一覧

トルーマン・カポーティ 真実のテープ

評伝『トルーマン・カポーティ』を基に、作家T・カポーティの栄光から転落までを追う文芸ドキュメンタリー。未完の絶筆『叶えられた祈り』は、そのスキャンダラスな内容によって激しい論争を巻き起こす。社交界から追放された彼は、酒と薬物に依存していく。オバマ政権時のホワイトハウスでソーシャル・セクレタリーを務めた異色の経歴を持つイーブス・バーノーの初監督作品。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    奇しくもカポーティが亡くなった1984年に録音された数々の証言が約40年ぶりに発掘。そして数々の美しい古写真に肉声が重ねられ、NYとその時代性が炙り出されていく。一際目力の強い少年の写真は証言で一気に生気を帯びてくる。現在NYはコロナで死都に変貌しつつある。自分が愛する者を「小説」で死刑や自殺に追い込んでいく屈折した愛の形は、愛情と軽蔑が入り乱れ倒錯しているが、NYらしい。都市と出来事を肉声と写真とで再考察する内容は、記憶という業を考えさせられる。

  • フリーライター

    藤木TDC

    「三島由紀夫VS東大全共闘」同様、すでに書籍(G・プリンプトンによる伝記)にある内容の映像付き要約だが、映画「カポーティ」と重なる要素は少なく、焦点は遺作『叶えられた祈り』にある。カポーティ本人の動く姿がたっぷり見られ、彼が主催した舞踏会や通ったディスコ(スタジオ54、R・フィリップ主演映画「54」の舞台)の映像も登場し旨味濃厚。60年代に政治と係わらなかったアメリカ人作家の存在意義を今日的に問い直す。未読ならきっと『叶えられた祈り』が読みたくなる。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    ネタ元の人が面白ければ逸話も多くて、下手な撮り方をしなければそこそこ観られる作品に仕上がる。それにカポーティほどお騒がせな著名人となると、写真だけでなく映像資料も豊富に残っている。だがインパクトがあって映える画像となると、結局見慣れた写真ばかりになってしまうのはありがちな注意点だ。奇行、麻薬、虚言癖のどれをとっても見聞きしたことのある話で、新ネタがない時に作るドキュメントとはなんだろうと思う。安易なドキュメンタリーの量産は続く。

1 - 3件表示/全3件