私たちの青春、台湾の映画専門家レビュー一覧

私たちの青春、台湾

不安定な台中関係下の台湾で、社会運動に身を投じる2人の若者たちが、自らの夢を追い、挫折していく姿を見つめながら、台湾民主化の歩みを女性監督の目を通して読み解いていくドキュメンタリー。2018年(第55回)台湾金馬奨で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。監督は、数々のドキュメンタリー映画制作に携わってきた傅楡(フー・ユー)。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    記憶に残るひまわり革命など台湾の青く初々しい学生運動が内部から描かれる。監督のモノローグとともに、ふたりのリーダーが頭角を現し、神格化され次第に挫折に至る過程。最終的には「社会運動」も「ドキュメンタリー」も「私(監督)」も、無力で役立たずだと肩を落とす。しかしその題材を自分ごととして撮らざるを得ないその意思そのもの、監督自身が映り込む。これは華々しい社会変革こそ起こさないが、明らかにドキュメンタリー作品として成功であることは間違いない。

  • フリーライター

    藤木TDC

    意地悪な見方をすれば、出演者と監督の挫折が映画を面白くした。台湾学生の革命ごっこにも見える無邪気な政治闘争に混じった監督は、国を動かす歴史のダイナミズムに巻き込まれる。ひとときの全能感とあっけない理想の頓挫。その瞬間にしか撮れない記録は青くさく、若い女性監督ゆえの感傷も濃いが、そこにむせかえる「青春」の匂いと「映画」の成立がある。香港の民主活動家・黄之鋒がたびたび登場(周庭も一瞬)。ひまわり運動は雨傘革命に強く影響し世界を揺らしたのだと知った。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    学園祭などで参加者から「楽しかった」と興奮気味に繰り返されても、何がどのように起きて楽しかったのかという客観的理由を説明されないと、状況が把握できないものだ。本作は渦中でカメラを回していた人間にとって、雑多な感覚として正直なのはわかるが、2時間の映画として立ち会うのはきつい。監督の「私」の語りが、時折登場人物である博芸の行動のような編集だったり、現場の中心人物たちへ微妙な感情的介入をしたりするのも、混乱を招いてわかりづらくしている。

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