ストックホルム・ケースの映画専門家レビュー一覧

ストックホルム・ケース

『ストックホルム症候群』の語源となったスウェーデンの歴史的強盗事件を基に、イーサン・ホーク主演で映画化。銀行強盗を実行した悪党のラースは、幼い娘を持つビアンカら3人を人質に取り、犯罪仲間であるグンナーを刑務所から釈放させることに成功するが……。共演は「アンロック/陰謀のコード」のノオミ・ラパス、「シャザム!」のマーク・ストロング。監督は「ブルーに生まれついて」に続き、イーサン・ホークと再タッグを組むロバート・バドロー。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    コメディタッチに人質銀行襲撃事件を描写。金庫に入れられていたのは「紙幣」ではなく「心情」。いくら強固な施錠をしたとて、人の心は不可思議で予期せぬ科学変化を起こしてしまうものだ。そもそも恋愛とはある種の非日常的な共犯的犯罪で、集団的な常識を侵犯し禁忌を踏むところにある。それを「結婚」という法に落とし込むというすり替えを行なうことで社会の安定をもたらす。「通貨」「警察」「政治」という三大公的立場と対峙するものが、「心情」や「予定不調和」か。

  • フリーライター

    藤木TDC

    銀行強盗映画にしてはテレビ並みに健全で、E・ホークの演技も奇矯とはいえ目を瞠る域でもなく、かといってリアリズムに徹したわけでもなく、劇場で見て充実を得る内容とまでは。また基づく実際の事件は違っても、どうしても「狼たちの午後」を意識してしまい、予算を縮小してお上品に改変したリメイクの印象も。ストックホルム症候群の不可解な心理も、私はB級犯罪映画や成人映画に用いられたそれを見過ぎているせいか新味は感じず、正直この映画の興行価値はよく分からない。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    ストックホルム症候群を奇妙な心理状態とみなして撮るか、人質解放のための交渉術をパニックスリラー的に撮るかなど、視点が色々考えられる題材において、いささか退屈な設定に落ち着いたのがもったいない。被害者の人間心理として真っ当な生存戦略であるのを、こんな極端な場で出会った男女のほのかな惹かれ合いにしても別にいいのだが、慎みのベールでもう一歩踏み込まない。中盤以降に動き出す、警察や首相を悪人に仕立てた三つ巴の犯罪ドラマのほうが盛り上がる。

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