僕の好きな女の子の映画専門家レビュー一覧

僕の好きな女の子

芸人で芥川賞作家の又吉直樹による恋愛エッセイを、演劇ユニット玉田企画の主宰で「あの日々の話」ではメガホンを取った玉田真也が映画化した恋愛劇。友達以上恋人未満の加藤とミホ。ミホの本心はわからないが、加藤はこの関係を壊さぬよう気持ちを抑え……。恋をする人間の感情を、等身大の会話劇として描き出す。逡巡する加藤をミュージシャンとして活動する一方「ギャングース」などに出演する渡辺大知が、ヒロインのミホを「ハルカの陶」の奈緒が演じる。島ぜんぶでおーきな祭-第11回沖縄国際映画祭- TV DIRECTOR'S MOVIE部門および第6回京都国際映画祭TV DIRECTOR‘S MOVIE部門上映作品。
  • 映画評論家

    川口敦子

    半径2メートルの小さな世界、だがこの小ささはオッケーと思わせる。ちっぽけな生の恥かしさやいたたまれなさを活写する台詞を芯に、人の心の機微、陰翳をみつめ尽す気概が玉田真也の演出にも脚本にもしぶとく息づいているからだろう。ほんのひとことのすれ違いでかけがえのないひとりを互いに失うことの涙ぐましさを小ささの中で煮つめつつ、そこに脚本家の主人公に託した虚実皮膜にまつわる考察も食い込ませる。周囲の面々の台詞が時にお笑いのルティーンを思わせるのが惜しい。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    「れいこいるか」と同じ日に観たのでどうしても比較してしまうが、主人公の不器用さ、他者との距離感、空間の切り取り方、すべてが「こう感じてほしい」という思惑の通りにしつらえられていて、風景やことばの後景に観る者の意識が及ぶまえにどんどん物語が進んでしまう。いまドキドキしている、いま寂しい気持ちを抱えている、と手に取るようにわかってしまうことが映画としての豊かさを奪うということをあらためて思い知らされた。主演の二人のたたずまいはわるくない。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    又吉直樹のエッセイが原作。あえてそう呼ぶが、こういう男子と女子。いたし、いるだろうが、こんなふうに作品化されると、二人に文句をつける以上に、作り手にこの二人のいる世界をどうしたいんだと問いたくなる。渡辺大知と奈緒。うまい。とくに奈緒は怖いくらい。作品的には「見る力」をもった仲野太賀が登場して着地点が用意された。玉田監督、長いショットで人物を活かし、公園の撮り方などにもなにかある。でも、脚本協力の今泉力哉の「愛がなんだ」と同様に、二度は見たくない。

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