パブリック 図書館の奇跡の映画専門家レビュー一覧

パブリック 図書館の奇跡

「ボビー」のE・エステヴェスがある新聞記事に着想を得たヒューマンドラマ。大寒波にもかかわらず市のシェルターがいっぱいで、行き場のない約70人のホームレスが図書館を占拠する。彼らの苦境を察した図書館員スチュアートも彼らと行動を共にするが……。監督・脚本・製作のエステヴェスが主演を務めるほか、「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」のアレック・ボールドウィン、TVドラマ『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』のテイラー・シリング、「トゥルー・ロマンス」のクリスチャン・スレーター、「007/カジノ・ロワイヤル」のジェフリー・ライト、「ネオン・デーモン」のジェナ・マローン、「それでも夜は明ける」のマイケル・ケネス・ウィリアムズらが出演。第43回トロント国際映画祭出品作品。
  • 映画評論家

    小野寺系

    監督としても俳優としても、久々にエミリオ・エステヴェスの仕事を見ることができた。公共と人命の問題は、いま最も扱うべき意義のあるテーマだといえるし、それをユーモアと善良な人々の描写によって楽しませながら見せていく手腕も確かだ。劇中で表現される「怒りの葡萄」のテキストに託された弱者の悲痛な感情と、それを拾い上げようとする、地味ながら優しい図書館スピリットが胸を打つ。いまの日本も知性が軽視され、自己責任論が蔓延している状態。本作の精神をぜひ学んでほしい。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    図書館員が主人公のこの映画は解りやすい。物語を構成する図書館利用者の権利、貧困、警察のあり方、野心的な検察官、主人公の過去を調べ上げて報道するメディアの姿勢。これらはいま現在の、日本の私たちにも社会問題として、共有可能。80年代にもて囃された青春映画の若手俳優たちブラット・パックの中心にいたE・エステヴェスは、当時話題の「ブレックファスト・クラブ」では図書館で懲罰の課題に取り組み、今回はソーシャルワーカーの役割を果たす。社会の混迷は、より深刻に。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    公共図書館に立て籠るホームレスたち、それを擁護する館員、締め出そうとする警察、民衆を煽るマスコミ……それぞれの立場と正義が拮抗するたった一晩の物語の中に民主主義が抱える問題やキリストの矛盾を突く鋭い視点が詰まっている思考実験的な要素の強いこの作品に真の正解など用意されているはずもなく、さすれば映画としてはどこに落とし込むかが問題になってくるのだが、想像の斜め上をいく着地を決めることで極めて映画的な多幸感を味わえる一級品に仕上げているのは見事だ。

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