ブルーヘブンを君にの映画専門家レビュー一覧

ブルーヘブンを君に

2019年にデビュー50周年を迎えた由紀さおりの初主演映画。孫や家族に囲まれて暮らす著名な園芸家の鷺坂冬子。だが彼女は、がんが再発し、余命半年と診断されていた。主治医に励まされた冬子は、“ハンググライダーで空を飛ぶ”という夢に向かっていく。共演は「ジャンクション29」の小林豊、「純平、考え直せ」の柳ゆり菜。
  • 映画評論家

    北川れい子

    青いバラ“ブルーヘブン”の誕生秘話と思いきや、丸ごと、由紀さおりにおんぶにダッコのワンマン映画で、言っちゃあなんだが、ハングライダーも、岐阜の大自然も、由紀さおりの刺身のツマ。園芸家として実績を残した彼女が、ガンで余命を宣告されたことで、青春時代の思い出が甦り、ハングライダーに挑戦するというのだが、周囲を巻き込んでの冒険にムリヤリ感があり、ドラブル続出もヤラセ演出がミエミエ。とは言え、これが外国映画だったら素直に楽しんだかも、と思ったりも。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    事実を題材とした苦心と感動の物語だが、まさにそのキャッチを少しもはみ出ることのない平板な演出と演技――しっとりした場面には抒情的な、コミカルな場面には軽快な音楽が流れ、深刻な顔をした人物が深刻なことを、おどけた顔をした人物がおどけたことを言う――がつづく(とくに寺脇康文とその子分たちの登場場面がきつい)。実人物に配慮したのはわかるが、由紀さおりの主人公、もっと重層的なふくらみを持たせられなかったのか。撮影も、とくに屋内場面に工夫がなく退屈。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    由紀さおり、リズム感は当然として、芝居もいい。遅まきながら、その演技者としての力を発揮する主演映画が誕生した。祝福したい。彼女の役は、不可能とされていた青いバラを生みだした実在のバラ育種家がモデル。原作も手がけた秦監督の意図は、わかりやすい話の運びで、病気に負けずに夢を実現するヒロインと周囲の善意の人物たちを描き、明るい肯定感を立ちのぼらせることだったろう。それに成功していないとは言わないが、随所で嘘っぽくドタバタして薄っぺらな印象。惜しい。

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