お名前はアドルフ?の映画専門家レビュー一覧

お名前はアドルフ?

ヨーロッパで話題を集めた舞台『名前』の映画化。哲学者で文学教授のステファンと妻のエリザベスは、弟トーマスとその恋人をディナーに招く。ところが、トーマスが生まれてくる恋人の子どもの名前を“アドルフ”にすると公表したことで、事態は思わぬ方向へ。出演は「はじめてのおもてなし」のフロリアン・ダーヴィト・フィッツ、「帰ってきたヒトラー」のクリストフ・マリア・ヘルプスト。監督は「ベルンの奇蹟」のゼーンケ・ヴォルトマン。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    ヒトラーやナチスが絡んでると日本公開が実現しやすい近年のヨーロッパ映画の配給環境に思うところは多いのだが、中身は子どもの名付け問題を入り口に、アンジャッシュのコント的なすれ違いを経て、長年秘めてきた親戚や夫への本音を爆発させる気軽なコメディ。こんな他愛のない話が、フランスの舞台劇から始まって、フランス、ドイツ(本作)、イタリアと各国で映画化されているのには少々戸惑う。舞台の映画化作品としては手堅い作りだが、それ以上でも以下でもなく。

  • ライター

    石村加奈

    三世代で食卓を囲めば、ニュースの感想ひとつ言葉にするにも批判精神と自制心の狭間で緊張感を強いられる生活ゆえ、親しい大人が集って、本音をぶっちゃけ合う設定には違和感を抱いたが、同世代ならではの丁々発止の会話劇は痛快。普段は押し止められていた不穏な衝動の堰が切れてしまった晩餐の席でいちばんの愚か者はトーマスだが、ジャッキー溺死の真相などシュテファンの怖さよ! ドイツで150万人が抱腹絶倒した作品本来の面白さを無邪気に楽しめる日が再び来ることを願う。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    弟が生まれてくる息子の名前をアドルフにすると言い出したことから始まる一夜の会話の攻防戦。日本の名前だとなんだろ? 智津夫かな、などと考えているうちに、観ているこちらも巻き込まれ、この一家の一員になったような錯覚を覚え、インテリたちの化けの皮が?がし?がされる様は爽快感と同時に自己嫌悪にも陥る。意外な展開が次から次へと起こって爆笑、最後にはちゃんとオチもついた大団円を迎え、あぁ家族ってこうだよな、と顧みてしまう会話劇のお手本のような作品だった。

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