プラネティスト(2020)の映画専門家レビュー一覧

プラネティスト(2020)

    「泣き虫しょったんの奇跡」の豊田利晃が4年に渡り撮影した小笠原諸島のドキュメンタリーの再編集版。小笠原に魅了された豊田がレジェンドサーファーの宮川典継と出会い、映画制作に着手。原初の地球の風景のなかでアーティストたちのセッションをとらえる。出演は、「沈黙 サイレンス」の窪塚洋介、「半世界」の渋川清彦。ナレーションは、「食べる女」の小泉今日子。
    • 映画評論家

      川口敦子

      「夜をくぐりぬけていくしかない」島、そこにある海、夕陽、原初の地球の風景に魅せられて4年をかけて撮り続けた監督豊田。その彼に招かれた“アーティスト”たちの言葉は時に上滑りの軽さや薄さ、気恥かしさをも放り出すが、そんな島と人との“セッション”をさえ拒まず受け容れ、自身の歩調で帰り着いた海で、島で、自らの旅を続けるひとりが朗らかに語る覚悟はするりとこちらの胸底へと染み入っていく。来訪者たちの部分なしでもよかったなんて意地悪な感想も呑み込ませる。

    • 編集者、ライター

      佐野亨

      4年がかりで撮られたという作品。自然回帰への切望、アーティストたちへの敬愛と友情があふれ、映画作家としての自己の存在を問いつづける豊田監督にとって、この時間がかけがえのないものであったことがうかがえる。であるからして、この作品じたいがそれらの寵愛を受け同化する人物たちのなかだけでみごとに完結しており、結果として小笠原諸島の美しい自然までもがその閉じた世界のなかに収斂してしまうのも致し方ないことなのかもしれない。「破壊の日」への期待をこめて。

    • 詩人、映画監督

      福間健二

      住民票を移してまで肩入れして小笠原を撮りまくったという豊田監督。まず、映像の美しさを味わうべきなのだろうが、そういうのもありすぎると、そんなものかと慣れてくる。ミュージシャンや俳優を招いて風景のなかでなにかやってもらうというやり方も、どうだったか。中村達也のドラムなど、やってくれているとは思ったが、作りに行っている感がつよく、監督の素手が感じられない。宮川典継さんの話だけでもっと押せたし、自然そのものにもっと語らせることもできたはずだ。

    1 - 3件表示/全3件