ひびきあうせかい RESONANCEの映画専門家レビュー一覧

ひびきあうせかい RESONANCE

    音楽家の青柳拓次が2013年から始めた音楽プロジェクト、サークルボイスを取り上げたアート映画。音楽を用いて国境を越えた調和を生み出すアイディアから生まれた、人々が輪になり声を重ねる参加型イベント、サークルボイス。そんな彼の旅に映像と音が寄り添う。青柳拓次は出演するほか、楽曲・サウンドデザインも手がけた。監督は、「スーパーローカルヒーロー」の田中トシノリ。
    • 映画評論家

      北川れい子

      歌は祈りだ、と誰かが言っていたが、讃美歌やゴスペルソングを持ち出すまでもなく、歌は宗教と深く結びついている。音楽家・青柳拓次が始めたという“サークル・ヴォイス”活動も、かなり宗教的な匂いがして、私にはどうも馴染めない。例えばドイツだったか、画廊風のスタジオに集まった親子連れたちに、あなたたちはここに、等の指図をして円陣を組ませ、彼らにギターとスキャットの曲を延々と歌わせるくだり。一つの手法として面白くなくはないが、歌ぐらい勝手に歌いたい。

    • 編集者、ライター

      佐野亨

      まずことわっておかねばならないのは、評者はこの作品を視聴用のリンクをもらい自宅のパソコンで観たということだ。これだけでこの映画の価値は半減する。そして、音と映像への没入を奪われたぶん、ミニマムな人間の動きに意識が向いた。聴衆が一人もマスクをしていない狭い会場で演奏する青柳拓次。誕生日を迎えた娘を祝うためにハッピーバースデイを歌う人々。ミュンヘンのハウススタジオでリハーサル前に朝食をとるホッホツァイツカペレの面々。それらの風景に自然と涙が出た。

    • 詩人、映画監督

      福間健二

      青柳拓次の最近の音楽活動を知らなかった。祖父、母、そして彼へと受け継がれてきたものがあることについても本作で初めて知った。どうだろう。「Circle Voice」のプロジェクトはとても興味深いが、その音楽と人、もうひとつヴィヴィッドに迫ってこない気がした。田中監督、まず内輪から入りすぎている。そして編集の呼吸が浅く、ライヴの音の持続を十分に体感させてくれない。この世を去った人とこれから生まれてくる人に語りかける言葉が最初と最後に。ズバリ、現在が足りない。

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