望みの映画専門家レビュー一覧

望み

雫井脩介による同名サスペンス小説を「人魚の眠る家」の堤幸彦が映画化。妻と2人の子供たちと平和に暮らす一級建築士の石川一登。ある晩、高校生の息子・規士が帰宅せず、連絡も途絶えてしまう。そんななか、規士の同級生が殺害されたというニュースが流れる。出演は「決算!忠臣蔵」の堤真一、「マチネの終わりに」の石田ゆり子。
  • フリーライター

    須永貴子

    切り出しナイフとともに行方不明になった息子は、殺人事件の加害者なのか? それとも被害者としてすでに死亡しているのか? 真相が曖昧な状態が続くことで、胃が痛くなるような緊張感が伝わってくるが、それは原作と俳優の力だろう。ニュースバリューのある事件にハイエナのように群がる報道陣や、空気のコンセンサスが取れた途端に始まる嫌がらせなど、“世間”の描き方があまりにもステレオタイプで既視感の嵐。手堅くまとめてはいるが、映画としての新鮮味や輝きがない。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    原作は読んでいた。映画になるだろうと思っていて、期待もしていた。監督も脚本家も押しも押されぬ名人。大人の対応をしているなと思った。コンプライアンス的にもハナマルだろう。同級生殺人事件に長男が関わっているらしいが、詳細はわからない。息子が被害者であっても殺人者であってほしくはないと望む父親と殺人者であっても生きていてほしいと望む母親。二人の望みがぶつかり火花を散らし、夫婦に決定的な亀裂が走る……ことはなかった。いい映画だとは思うんだが……。

  • 映画評論家

    吉田広明

    本作の作劇の肝は、行方不明の息子が加害者なのか被害者なのか分からない宙づりの時間にある。そこに世間の悪意が入り込み、母親の心の隙を狙ってジャーナリストが介入、父母の間を分断する展開も生じる。凶器かもしれなかったナイフを父が発見し、そこから彼が息子の無罪を確信、その途端に事態は急激に変化を迎えるのだが、ナイフのありかに意外性もなく、この発見を遅らせていることに映画の肝があるとなると、一緒に発見されたメモで感動させるのも目眩ましに見えてくる。

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