SKIN スキンの映画専門家レビュー一覧

SKIN スキン

米国のレイシスト集団“ヴィンランダーズ”の共同創設者ブライオン・ワイドナーの実話を映画化。白人至上主義者グループ主宰者の下で育ち、その中核を担うようになったブライオンは、シングルマザーのジュリーと出会い、過去と決別しようとするが……。出演は「ロケットマン」のジェイミー・ベル、「パティ・ケイク$」のダニエル・マクドナルド。監督のガイ・ナティーヴが手掛けた短編「SKIN」がアカデミー賞短編実写賞を受賞したことで、長編映画化が実現した。
  • 映画評論家

    小野寺系

    暴力的な白人至上主義団体の内側の世界を垣間見せる作品として興味深い。タトゥーが描かれた皮膚を焼く身体的な痛みと、過去の自分の差別的な考えを捨て去っていく心情的な痛みの表現を同期させる編集によって、走狗として使われる青年の葛藤に真実味と共感を呼ぶ力が加えられたと感じさせる。実話が基になっているという事情もあるのだろうが、主人公を利用する親代わりの男女が類型的な悪役像にとどまり、主人公を同情的に描き過ぎている点には少し物足りなさを感じた。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    人は生まれ変わることができると信じたいが、生まれ変わるのは相当むずかしい。ドラマはそのむずかしさが主題。変わろうとする主人公の改心のきっかけが、3人の娘を育てているシングルマザーのジュリーと知り合ったから。彼女もまた、主人公に惹かれる理由がはっきりしない。二人の恋愛関係でストーリーが進むが、要するに互いの動機づけが曖昧で、主題は明確なのに話は響いてこない。この本篇の出資を募るために作った21分の短篇「SKIN」が見応え抜群なので、平凡さが惜しい。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    未だはびこる黒人差別問題に差別者を主人公に据えて切り込むという試みは、差別心理をよりグロテスクに表出させるにとどまらず、改心したのちに組織から足を洗う過程に伴う苦難にもリアリティを与えているし、愛情によって暴力に打ち勝つという展開が綺麗ごとに堕ちていないのも素晴らしいのだが、彼の心情的な痛みに呼応するタトゥー除去手術描写を本線の間に何度も細切れに挟み込んでくる構成は、結末をあらかじめ提示してしまっているという意味において、僅か減点要因に感じた。

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