裏アカの映画専門家レビュー一覧

裏アカ

TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2015準グランプリを受賞した人間ドラマ。どこか満たされない真知子は、SNSの裏アカウントを作り際どい写真を投稿。思わぬ反響に快感を覚える中、フォロワーの一人ゆーとと一度限りの関係を持つが、彼に惹かれてしまい……。木村大作、降旗康男、原田眞人、成島出といった監督のもとで助監督を務めてきた加藤卓哉が本作で監督デビュー。やり場のない気持ちを抱えSNSの裏アカウントにハマっていく伊藤真知子を「火口のふたり」の瀧内公美が、表の顔と裏の顔を使い分ける年下の男をドラマ『左ききのエレン』に主演した神尾楓珠が演じる。2020年6月12日より公開延期。
  • 映画評論家

    北川れい子

    世間知らずの10代の少女ならいざ知らず、それなりのキャリアを持つ30代のヒロインの、あまりの無防備で自虐的な行動にアッケにとられる。仕事への不平不満? 心の渇きか体の渇き? ともあれ彼女は、きらびやかな都会の片隅で、裏アカに溺れていくのだが、一方でこれがデビュー作の加藤監督、地に足の着いたリアルな演出もぬかりなく用意し、ヒロインは裏アカと日常を行ったり来たり。結局彼女は両方から撤退せざるを得なくなるのだが、教訓的なのは気になるがときに教訓は必要!!

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    タイトルから後ろ暗い欲望を興味本位的に見せる映画かと警戒したが、高田亮の脚本(加藤監督と共同)は、都市生活者の孤独とそこから生じる承認欲求をめぐる滑稽な悲劇をスリリングに描く。いや、そもそも承認を求める営みそれじたいはなんら後ろ暗いものではないはずで、どこまでも清冽な瀧内公美の存在感も作用し、滑稽でありながら切実な物語として観る者の共感を喚起する。文字の演出、森田芳光の「(ハル)」を思い出させるが、もう少し構造的に生かせなかったか。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    見られたい自分がいる。裏アカでそれを解き放つ。反応に引きずられて危険なところまで。いわば最近の文化の症候を「お楽しみください」なのだが、瀧内公美演じる真知子が神尾楓珠演じるゆーとに出会った夜を境として、快楽とその充足の不可能性の二段階を通路として生の意味を奪おうとするこの世界の空虚さが歩きだした。共同脚本の高田亮と加藤監督、最後までよく持ちこたえたと思う。愛の不毛、アントニオーニに負けないものがある。富士食堂と客の神戸浩たち、うれしかった。

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