ヒノマルソウル 舞台裏の英雄たちの映画専門家レビュー一覧

ヒノマルソウル 舞台裏の英雄たち

長野五輪でスキージャンプ団体の金メダルを陰で支えたテストジャンパーたちの実話を映画化。西方はリレハンメル五輪で代表選手として出場し、銀メダルに甘んじる。故障により次の長野五輪の代表を逃すが、テストジャンパーとして参加してほしいと依頼される。出演は、「図書館戦争」シリーズの田中圭、「春待つ僕ら」の土屋太鳳、「あの頃、君を追いかけた」の山田裕貴。監督は、「荒川アンダーザブリッジ」の飯塚健。
  • フリーライター

    須永貴子

    代表に漏れた仲間のウェアを身につけて団体戦に挑んだ原田選手など、実話に基づく描写が強い。テストジャンパーという裏方に焦点を当てた着眼点も良い。CGによる吹雪も大迫力。だが、あるテストジャンパーの「オリンピックに関わりたい」という利己的な動機が、「日本の金メダルのため」という全体の目的にすり替えられ、テストジャンパーたちの安全のために下された決断が翻される、決死隊的展開を美談に仕立てていて?然。森喜朗的思考回路をタイトルが的確に表している。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    これが実話でなかったら、出来過ぎだとそっぽを向かれるかもしれない。もちろん実話そのものではあり得ず、随所に脚色が施されているだろうが、やはり実話は強い。なぜみんなもっと実話をやらないのかといつも思っていた。長野オリンピックをオンタイムで体験した人にもそうでない人にも等しく共感を呼ぶと思う。負け組が奮闘する話だからだ。話の展開は骨太で王道を行っているし、随所にクライマックスに至る伏線が張られていて、セオリーに忠実である。少なくとも見て損はない。

  • 映画評論家

    吉田広明

    長野オリンピックの際のテストジャンパーの役割を初めて知ったが、彼ら故に金メダルが獲れたかのような美談仕立てには若干の違和感がある。悪天候で危険にもかかわらず彼らを飛ばせて競技再開(ひいては日本の逆転)を狙う日本の競技関係者と、日本の為と自ら飛んだテストジャンパー、彼らには当然無関心、結果=メダル(しかも2位では駄目)にしか興味のない観客を見ると、競技を国の順位闘争に貶めるようなオリンピックのあり様自体そもそも見直すべきとの考えを新たにする。

1 - 3件表示/全3件