藍に響けの映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
北川れい子
お嬢さま系のミッションスクールの部活が和太鼓とは、これはこれで意表を突く。その和太鼓に出会ったことで成長していく少女の話で、作品のキーワードは自己表現、自己解放の“音”。そういう意味ではかなり難易度の高い作品で、実際、音よりも少女の環境とか、疎外感とかの話で遠回り、なかなか“音”には出会えない。やっと出会っても練習段階で不協和音が生じ……。終盤のパフォーマンスはみているこちらも熱くなるが、演じる若い女優たちの顔がみな似ているのには閉口。
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編集者、ライター
佐野亨
舞台立てや人物設定など劇的な要素がこれでもかと揃っていて、下手を打てばありきたりな青春感動ものになってしまうが、画面の構図、そのなかでの人物の動かし方につつしみがあり、しぜんと映画の時間に引き込まれる(原作も読んだが、これをこう映画化したかという驚きがあった)。春木康輔の撮影の力によるところ大だろう。ただ、和太鼓がことばの代替物になる、というそのことへの踏み込み、いわばことばにできないことのほうに本当のドラマがある気がしてならなかった。
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詩人、映画監督
福間健二
娘たちを大勢登場させて、なぜこんなに辛気くさいのか。ミッション系女子高の部活の、和太鼓。「こんなシケタ音出して」とだれかが言うが、太鼓の音が気持ちよく響かない。紺野彩夏演じる環の、前半のはっきりしない表情と、久保田紗友演じるマリアの、不安を抱えた善意。「藍」なのかもしれないが、弾みがつかない上に、練習は完全に体育会系的。ポンと一発叩いてみせる指導には呆れた。奥秋監督、最後の五分で一気に取り返す作戦だったか。表現は、作っていく過程の楽しさが大事。
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