ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏の映画専門家レビュー一覧

ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏

2000年代半ば、全米の注目を集めながらも、架空の存在であることが判明し、大スキャンダルとなった作家“J・T・リロイ”の事件を映画化。親元を離れた10代の少女サヴァンナは、“J・T・リロイ”名義で小説を出版する作家ローラと出会うが……。出演は「アクトレス ~女たちの舞台~」のクリステン・スチュワート、「スノー・ロワイヤル」のローラ・ダーン。監督は「ストレンジャー 異界からの訪問者」のジャスティン・ケリー。
  • ライター

    石村加奈

    ローラではなく、サヴァンナの視点でスキャンダルの真相を捉えたとうたうが、JT役を引き受け続けたサヴァンナの動機より、こんな真っ赤な嘘(スピーディの赤いウィッグが印象的)を思いついたローラの理由に胸を打たれるのは年のせいか。サヴァンナのティーンエイジャーらしい焦心を、いい感じにかき乱すのはル・ティグラのダンス・ミュージック。サヴァンナが恋に落ちてしまう美人セレブ・エヴァをD・クルーガーが好演。天国から地獄まで、カンヌ映画祭のシーンは圧巻の貫祿だ。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    00年代、謎の作家として登場したJ・T・リロイ。その「正体」をめぐる騒動を描いた本作は、リロイを演じるサヴァンナの視点で描いている。彼女が徐々に架空であるはずのリロイと同化し、リロイの小説の映画化で主人公サラを演じるエヴァは、サラに憑依する。「作者」であるローラは、“嘘の中に真実以上のものが宿る”ことに歓喜し、混乱する。「実話」を構成する何重もの虚飾された真実。それは実にグロテスクだが、誰もがクリエイティブそのものに対してだけは誠実なのが泣ける。

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