ファーストラヴ(2021)の映画専門家レビュー一覧

ファーストラヴ(2021)

島本理生による第159回直木賞受賞作を「十二人の死にたい子どもたち」の堤幸彦監督が北川景子主演で映画化。女子大生・聖山環菜が父親殺しの容疑で逮捕された。事件を取材する公認心理師・真壁由紀は、義理の弟で弁護士の庵野迦葉とともに面会を重ねるが……。共演は「水曜日が消えた」の中村倫也、「記憶屋 あなたを忘れない」の芳根京子、「最初の晩餐」の窪塚洋介。
  • フリーライター

    須永貴子

    衝撃的な事件や設定を扱う“問題作”を原作に、謎めいたネタをちりばめてざっくりと回収し、しかつめらしい家族ものに仕上げる、堤監督らしい一本。主人公と父親殺しの容疑者が、苦しみ葛藤した末に、晴れやかな表情を見せて映画は終わる。父親から受けたトラウマを彼女たちが乗り越えるいい話のようにまとめられているが、彼女たちを苦しめた存在や問題に対する、作り手からのステイトメントが伝わらないのはいただけない。感動ポイントでわかりやすい劇伴を流すのにも萎える。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    回想で描かれる事件は恐ろしく不自然だ。女子大生は「父を包丁で刺してはいない。包丁が刺さったのだ」と言うが、そもそも駆け寄る父親を前に決して包丁を離さなかったのを見ても、殺意がなかったと言えないはず。未必の故意ではなかったのか。ことさらに彼女の罪のなさを強調しようとしたせいか、空回りした二時間サスペンスのような趣になっている。映画にするにはいい題材なはずなのに、なぜこうもぞんざいな印象を与えるんだろう。胸に迫るものがどこにあるのだろうか。

  • 映画評論家

    吉田広明

    心理師と弁護士が、女子大学生による父殺害事件の真実を探求、心理師と大学生はそれぞれ幼少時に父を始めとする大人の性的欲望によって陰に陽に心を傷つけられている設定で、その類似は面会時、ガラスに重なる二人の顔で象徴される。他にもドローンの多用、雲間から覗く太陽など、象徴的な画面が多く、思わせぶりが鼻につく。裁判ものの面も持つが、真実が小出しにされて、裁判で劇的にすべてが明らかになるわけでもない作劇が中途半端。終わってみると題名の意味が曖昧なのも難。

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