サイゴン・クチュールの映画専門家レビュー一覧

サイゴン・クチュール

ベトナムのトラディショナル・ファッション“アオザイ”をモチーフにしたSF青春ドラマ。1969年。老舗の仕立て屋の娘ニュイはアオザイを嫌い、伝統を継承する母親に反発していた。だがある日、突如21世紀にタイムスリップした彼女は、変わり果てた自分と対面する。主人公ニュイを『フェアリー・オブ・キングダム』のニン・ズーン・ラン・ゴックが演じるほか、同作で監督・主演を務めたゴ・タイン・バン(ベロニカ・グゥ)が出演。ベトナム映画祭2018、第13回大阪アジアン映画祭で「仕立て屋 サイゴンを生きる」のタイトルで上映。
  • ライター

    石村加奈

    アオザイと家業の伝統に反発して、自分のファッションを確立しようと模索するヒロイン・ニュイがいきいきとしてチャーミングだっただけに、ラストのアオザイルックも、わかりやすいナチュラルメイクに変身!ではなく、彼女らしいフレッシュな着こなしを期待していた。母親役のゴ・タイン・ヴァンやジェム・ミーらの年季の入った佇まいに敵わず、残念。一方、エンドロールでやや唐突に踊り始めた、ニュイ母娘のダンスは素敵だった。踊り終えた後の、二人の物語の続きが俄然観たくなった。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    サイゴンを舞台に69年から17年にタイムスリップした傲慢な女子ニュイが、否定していた家業のアオザイ仕立ての素晴らしさに目覚めていく、というやや強引な展開。ニュイが未来の自分とまるで親子みたいな関係になっていくなど「バック・トゥ~」ほかタイムトラベル映画でおなじみのタイムパラドックス問題を完全に無視。69年を舞台にしているのにベトナム戦争も全く描かない。しかし演出は堅実で、変化を楽しみながら伝統を重んじる、というテーマを構造自体で表現している。

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