はるヲうるひとの映画専門家レビュー一覧

はるヲうるひと

俳優の佐藤二朗が主宰する演劇ユニットで上演した舞台を、自ら原作・脚本・監督・出演し映画化。至るところに置屋が点在する島に、置屋を仕切る長男・哲雄、哲雄に子分のように従っている次男・得太、長年の持病で床に伏している長女・いぶきの3兄妹がいた。出演は、「50回目のファーストキス」の山田孝之、「パパはわるものチャンピオン」の仲里依紗、「架空OL日記」の坂井真紀。第35回ワルシャワ映画祭1-2コンペティション部門正式出品作品。
  • 映画評論家

    北川れい子

    売春島の売春宿とは、かなりご大層な設定で、何やら時空の異なる世界の話のよう。そんな世界で生きる3人兄妹の愛憎が、澱んだ空気の中で進行していくのだが、どうも映画自体が独り相撲を取っているようで、いまいちピンとこない。格別土着性とか宿命的な要素があるわけでもないし。むろん、人間の業とか、出口なし的な状況を描いた寓話としてみることも可能だが、それにしては兄妹の関係も娼婦たちのエピソードも表面的でありきたり。山田孝之が受身演技ばかりなのももの足りない。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    「宮本から君へ」で垣間見えた佐藤二朗という役者の「いやな感じ」が全篇を支配する。と同時に、佐藤二朗の現在の立ち位置がなければ成立しなかったであろう映画。その意味で山田孝之ともども、正しい力の行使の仕方といえる。戯画化に陥る一歩手前の、あっけらかんとした人物造形の軽さは、脚本協力・城定秀夫の手腕が存分に活かされているところ。ただし、露骨な性描写やビザールな表現がもうひとつ血肉化されず、ウケねらいとしての過激さに映ってしまうのが惜しい。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    こういうヤバイ島が実際にあるのだろうが、これは架空の島の話。時代設定は「近過去」か。半世紀以上前ならいざ知らず、理解に苦しむ惨めさのオンパレード。山田孝之演じる得太の怯え方。その腹違いの兄の、佐藤監督自身が演じる哲雄の造型。真相が明かされても哲雄はたいした罰をくらわない。スッキリしないことだらけだが、全体に一種の執念がみなぎっているのも確か。仲里依紗、今藤洋子、坂井真紀たちの女優陣は、娼婦の役はどんな女優もサマになるという説を裏付ける以上の演技。

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