水曜日が消えたの映画専門家レビュー一覧

水曜日が消えた

「屍人荘の殺人」の中村倫也が『映像作家100人2019』に選出された吉野耕平監督と組み、曜日ごとに入れ替わる7つの人格を持つ男を演じたサスペンス。7つの人格のうち“水曜日”の人格が消え、一番地味な人格“火曜日”は来るはずのない水曜日の朝を迎える。オムニバス「スクラップスクラッパー」内の「ファミリー」などを手がけ、「君の名は。」ではCGクリエイターを務めた吉野耕平が監督・脚本・VFXを担当。ドラマ『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』の石橋菜津美が“7 人の僕”を知る元同級生・一ノ瀬を、「パンとバスと2度目のハツコイ」の深川麻衣が図書館司書の瑞野を、バンド『ゲスの極み乙女。』でベースを担当する休日課長が“月曜日”の友人・高橋を、バイプレイヤーとして活躍するきたろうが医師・安藤を演じる。
  • 映画評論家

    川口敦子

    SF映画を現実に生きるような非日常的日常の毎日を送る(2020年5月の)今、一週間を日替わりの僕として生きる青年に起きる異変という設定も妙にすんなり受容され、そんな驚きのなさが企画の貧しさのせいなのか、世界の今のせいなのかと、軽く煩悶したものの、ひっかかりのないままに見終えてしまった。7人という割にはふたりの僕しかいなかったかもと小姑的文句を呑み込みつつ、7人格を筋と絡めて演じ分ける中村倫也を見たかったとフォローにならないフォローも呑み込んだ。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    この映画を観たのは火曜日の昼過ぎ。フリーの自営業者とはいえ、周囲の活動がピタリと息を止めたかのような時間感覚のなかで観るこの作品は、なかなかにヴィヴィッドに感じられた。七人の人格を中村倫也が演じる、というふれこみだが、その設定をこれみよがしなフックにせず、周囲との関係の摩擦をめぐるドラマとして描き出しているのが面白い。ただ、CM的な口当たりのよさに終始した画作りにいまひとつのめり込めず。これは一昨日に「精神0」を観たことが大きいだろう。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    見終わって奇妙な夢を見たという感じ。吉野監督、オリジナル脚本とVFXも。観客がついていけるギリギリを狙ったとしたら買いたいが、全体の希薄さも狙いだったか。ラスト、深刻顔をはっきり始末してないのはどうか。曜日ごとに変化する多重人格で一番地味な火曜日をベースにした選択は賢明だとして、中村倫也の、他の曜日の演技がわざとらしいのもしかたないとしても、女性たちが表面的にしか存在しない。医師もその助手も、かな。そう考えるとすべてが記号的。それも狙いか。

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