光を追いかけての映画専門家レビュー一覧

光を追いかけて

秋田県井川町周辺で撮影、「Arc アーク」の中川翼を主演に迎え思春期の心の痛みを描く青春ドラマ。彰は両親が離婚し父の故郷に引っ越すが、転校先に馴染めずにいた。ある日、謎の光を追っていくと、田んぼにできたミステリーサークルに横たわる真希と出会う。監督は、CMを多数手がけてきた秋田県出身の成田洋一。本作が初監督作品となる。東京から秋田に転校してきた内気な中学生・彰を中川翼が、彰にだけ心を開く不登校の同級生・真希を「破壊の日」の長澤樹が演じるほか、秋田県出身の柳葉敏郎や生駒里奈らが出演。2021年9月23日よりAL☆VEシアター supported by 109シネマズ、イオンシネマ大曲にて先行公開。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    離婚した父に連れられて田舎に引っ越してきた主人公。東京から赴任してきた女性担任教師。突然のUFO話。え? これってもしかして『北の国から』の変奏? 柳葉敏郎も出てるし。と、中盤から俄然前のめりになるも、作り手の生真面目さは、ミステリーサークルでさえも物語の内側で律儀に回収してみせる。ドローン撮影を必要以上に多用しているのは興醒めだったが、初監督作であることをふまえると、やりたいことをほぼ100%やりきれている稀有なケースなのではないか。

  • 映画評論家

    北川れい子

    なぜか以前に何度か観たことがあるような気がした。孤独な転校生男子も、屋根に上る不登校の女子も、背景や設定は違っても、思春期映画の常連キャラに近いからだろう。むろん、本作が映画第一作という成田監督は、秋田を舞台に、いま撮るべき作品として、周囲に馴染まない少年少女を選び、そんな彼らに謎の光線とミステリーサークルを用意して、背中を押すのだか、私的には廃校となる中学校のエピソードをもう少し描いてほしかった。嫌な大人が一人も出てこないのは気持ちいい。

  • 映画文筆系フリーライター

    千浦僚

    未確認飛行物体と撮影するカメラと神の三位一体。本作においてすべての登場人物が憂いを抱え、悩み、しばしば互いに諍い憎みあうが、UFOを目撃すると少し解放される。何も解決していないが。本作のドローン撮影の画のいくつかはUFOから人々を見る目線。監督は本作の撮影自体をひとときの仮の神として人々の心を集め、慰撫、解放を生み出そうとした。その賭けの重みは認めたい。中川翼と長澤樹が見交わす場面は強く、屋根の上の民謡、絞めた鶏の血抜きには文化が映っていた。

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