ワンダーウォール 劇場版の映画専門家レビュー一覧

ワンダーウォール 劇場版

「ジョゼと虎と魚たち」「天然コケッコー」などの渡辺あやオリジナル脚本による青春ドラマ。京都にある学生寮・近衛寮は、100年以上の歴史を持ち、代々そこに暮らす学生たちによって守り続けられてきた。だがある日、老朽化による建て替えの議論が巻き起こり……。出演は「よこがお」の須藤蓮、「新聞記者」の岡山天音、「デメキン」の三村和敬、「3泊4日、5時の鐘」の中崎敏。2018年、NHK BSプレミアムなどで放送された『京都発地域ドラマ ワンダーウォール』に未公開カットなどを追加した劇場版。
  • フリーライター

    須永貴子

    路線バスが京都の繁華街を出て、車窓の風景が変化していく。そこに「だんだん夜が夜らしくなる」というモノローグが重なる冒頭でノックアウトされた。現在も裁判が続いている、某大学対寮生との対立はあくまでもモチーフ。巨大な力にねじ伏せられてしまいそうな小さな力はどうすればいいのか、ヒントと勇気をもらった。大学にとって用済みのこの古い寮は、エリートにとっての理想郷ではなく、我々の生活にとっての映画館やライブハウス、書店、居酒屋なのだ。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    今や映画へのハードル(壁)は恐ろしく低い。スマホで撮りパソコンで編集すれば、小学生だって乗り越えられる。学生が作った未熟なものもかけてくれる小屋はあるし、ダメでもユーチューブがあるのだ。未見だが、元々のテレビドラマは中々のものだっただろう。それを未公開カットを加えて、手早く映画にしてしまう。お手軽感は拭えず、観ていて違和感がつきまとった。映画がそんなに軽いものだったとは!? やるべきものは山ほどあるのに、こんな形で肩透かしを食らった気がした。

  • 映画評論家

    吉田広明

    自治的に運営されてきた大学学生寮の存続を巡るドラマだが、兵糧攻めによって大学に「無駄」を排除し、その跡地に「有益な」医学部研究棟を建てるよう誘導する経済至上主義、また「壁」を作って討議に応じず、決定事項と数の力で問答無用に事を推し進める権威主義など、この数年間見続けてきた政治権力の横暴が凝縮的に表現されている。とは言え政治映画というだけでなく、もっと見ていたい愛おしい空間と人物が織り上げる青春ドラマでもあり、脚本、演出の手腕も称えられるべき。

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