みをつくし料理帖の映画専門家レビュー一覧

みをつくし料理帖

「天と地と」など数々の作品をプロデュース・監督してきた角川春樹が、髙田郁の人気時代小説を映画化。大坂を襲った大洪水により幼くして両親を亡くし幼馴染と離れ離れになってしまった澪は、蕎麦処つる家の店主・種市に料理の才を見出され料理人として働く。苦難を乗り越え料理人として成長していく澪を「酔うと化け物になる父がつらい」の松本穂香が、幼馴染の野江を「ハルカの陶」の奈緒が演じる。また、1980年代の角川映画を彩り角川三人娘といわれた女優陣のうち薬師丸ひろ子、渡辺典子が特別出演。角川春樹は本作を生涯最後の監督作品と位置付けている。
  • 映画評論家

    北川れい子

    友人から回ってきた原作を何冊か読み、NHKのドラマシリーズも観ているこちらとしては、キャスティング(昔の名前で出ています的な俳優さんがゾロゾロ)も、妙に間延びした春樹監督の演出も、かなり鮮度不足で、劇中の料理にばかり気がいったり。そういえば角川映画が旋風を巻き起こしはじめていた頃、私は公務員をしていたが、同僚曰く、“角川博”が映画を作ってんのね……。テナことを思い出したのも、ゆるい演出を持て余したからで、美術セットがチマチマしているのも残念。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    おどかしの達人である角川春樹が、「最後の監督作」と銘打って拵えた映画は、衒いの一切ない人情劇。およそ映画とはこれくらいでよい、という肩の力の抜き方、変哲はないが着実な画作り。いずれもつつましさを是とする物語に合っている。淡々としたなかにあって、激情への流れを違和感なく見せる松本穂香と古きよき棒読み演技をあえて再現した窪塚洋介、巧い。一つ二つエピソードを刈り込み、もう30分短くしても……と思ったが、それもまた「最後」の思い入れゆえと許容したい。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    角川春樹らしい派手さは、味つけを濃くしすぎない程度にいちおうあるが、本当においしい料理を出しているだろうか。娯楽映画で時代劇ならやってもらいたい「悪との対決」には、ほとんど興味がなさそうだ。そして明るい照明の江戸時代、人はもう慣れっこになったのだろう。石坂浩二と藤井隆、マンガ的で笑わせるが、「影」を作ってはくれない。女性が中心、ということくらいしか現在性が感じられない。思いあう二人。なんとかそれになった松本穂香と奈緒にお疲れさまと言いたい。

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