糸の映画専門家レビュー一覧
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フリーライター
須永貴子
国民的大ヒット曲をもとに作られる映画は、国内のマーケットだけを前提に、老若男女の味覚に合わせて開発された、ファミレスの王道メニューのよう。同様の本作を、コマーシャルだと一蹴するのは簡単だ。しかし、平成元年生まれの男女が紆余曲折を経て、令和に切り替わる瞬間に結ばれるというまるでSFのような筋書きを、ロケ地でメリハリを付けながら見せきる豪腕はプロの仕事。シンガポールの夜、カツ丼を食べながら泣きじゃくる小松菜奈だけでも観る価値がある。
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脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授
山田耕大
例えば心に残るのは、「エデンの東」の観覧車でのキャルとアブラとの一切手を動かさないキスシーン。キャルの心情が手に取るようにわかるのだ。母親の愛人から顔面に痣ができるほど暴力を受けている葵だが、漣と「小さな恋のメロディ」のように軽やかにキスをする。男そのものに対して怯えを感じている筈の葵があんなキスをする? そこから違和感が始まる。つい最近、これとものすごく似た話の映画も観た。お金をかけているようだが、なんとももったいない。
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映画評論家
吉田広明
平成元年生まれの男女が平成最後の日に劇的な再会を果たす話だが、見終えてなぜ平成なのか、平成をどう捉えているのか全く見えてこない。プレスによれば平成の名曲にインスパイアされ、平成に人気の子供の名前を用い、平成を代表する職業につけたというが、そんな官僚的な想像力から何が生まれるというのか(菅田の職業がチーズ製造なのも、北海道だから牛だろ、乳だろ、チーズだろ、程度の発想に見える)。瀬々監督にはこのような映画で時間を無駄にしてほしくないと心から思う。
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