酔うと化け物になる父がつらいの映画専門家レビュー一覧

酔うと化け物になる父がつらい

菊池真理子による同名コミックエッセイを実写映画化。父は毎日アルコールに溺れ、母は新興宗教信者。そんな両親のもとに生まれたサキは、酔って化け物となった父の奇行に悩まされ母の孤独に触れながら、崩壊していく家族を漫画として笑い話に昇華していたが……。出演は「わたしは光をにぎっている」の松本穂香、「半世界」の渋川清彦。監督は「ルームロンダリング」の片桐健滋。
  • フリーライター

    須永貴子

    父親が家族を不幸にするまでお酒を飲む理由を、主人公が最後までわからないまま終わる。漫画の原作者=主人公だからといって、わからないものをわからないまま映画にすることが、原作に対して誠実だとは思わない。実写化の意味とは、原作の人物や物語を独自の視点で考察して映像化し、観客に提示することでは? 主人公のモノローグをふきだしにして、カットを淡々と繋げる漫画的な映像にもなぜ実写化したのかという疑問を感じる。役者たちがみな、窮屈そうに見える。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    「ルームロンダリング」は中々のものだった。それで長篇デビューした片桐健滋監督の次回作のこれは、期待に違わぬ快作。題名から連想されるような隠隠滅滅なものにはしていない。父親がアル中で、母親が新興宗教にはまった末に自殺となれば、娘の人生は悲惨としか言いようがない。実際に悲惨だが、それを淡々と軽やかに描いている。だから余計に哀しさがじわじわとこみ上げてくる。渋川清彦が絶妙だ。学生の映画にでもノーギャラで出る渋川さんの映画愛は本当に涙ものである。

  • 映画評論家

    吉田広明

    ダメ人間ではあっても愛おしい存在として父を描けていたら少しは変わっていたのか。妻を宗教に走らせた末自殺に、娘をDV彼氏への依存症に追い込んだような存在が、死後に残した一言ですべて帳消し、いい人だったで終わっていいはずがない。父を分かってあげられなかった自分の方が化け物だったなど、殴らないでくれたDV夫に感謝するレベルの洗脳ではないか。確かに原作者にとってこれを描くことは救いだったにせよ、こんな異常を面白おかしく描こうとする映画の神経が分からない。

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