嘘八百 京町ロワイヤルの映画専門家レビュー一覧

嘘八百 京町ロワイヤル

中井貴一と佐々木蔵之介がW主演するコメディの続編。古物商の則夫と陶芸家の佐輔はひょんなことから京都で再会する。二人は、父の形見の茶器をだまし取られたという着物美人・志野を助けようとするが、やがてそれは京都の街を巻き込む大騒動に発展していく。監督は、前作に引き続き「百円の恋」の武正晴。出演は、「ラブ×ドック」の広末涼子、「地獄でなぜ悪い」の友近、「OVER DRIVE オーバードライブ」の森川葵。
  • フリーライター

    須永貴子

    「あるかもしれない」と思わせる、古田織部の幻の茶器“はたかけ”を主役にしたことで、破綻しがちなコンゲームが自由かつ無理なく展開し着地する。その分、はたかけに振り回される人々の人間模様も鮮かに浮き上がる。特筆すべきはやはり、実力はあるのにうだつが上がらないまま中年になってしまった、主人公の“骨董コンビ”だ。いよいよ老境も視界に入ってきたものの、仕事も色恋も人生も諦め方がわからず惑い続ける彼らに、スクリーンでまた会えることを切に願う。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    前作の企画を聞いた時、とても感心をした。日本でほとんど成功したことがないコンゲームものにチャレンジする気概! 成功しないのは、人を騙すのが上手とは言えない国民性によるものか。大概は情をまぶすことで、せっかくのゲーム性を損なってしまう。コンゲームものの要諦は客を騙すことにあるが、この映画は騙しきれていない。敵役がそんなにクズな悪人には見えず、ギャフンと言わせる痛快感がない。何よりアイテムが庶民には馴染みの薄い幻の茶器では興味が持てない。

  • 映画評論家

    吉田広明

    勧善懲悪のコンゲーム、仕掛ける方もワルはワルだが、人情家で根っからのワルではないという前作の土台を引き継いで、危なげない娯楽作になっている。ただ見終わってみると、謎の女にするあまり、広末の正体が最後に不明になる、国家ぐるみの悪だくみがあれでは暴かれないままなのでは、など、腑に落ちない点も多々出てくる。少なくとも生中継は本物だったことにすべきで、そうでないと緊張が削がれる。どこかに本物を入れておかないと、偽物も偽物として生きないように思われた。

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