「吉祥天女」のストーリー
昭和四十五年。金沢のある高校に、一人の転校生がやってくる。付近一帯の土地を所有する叶家の娘、小夜子(鈴木杏)だ。幼い頃に親戚に預けられていた小夜子だが、新興の建設会社の息子である暁との縁談話が持ち上がったため、実家に戻ってきたのである。小夜子は瞬く間に、高校中の注目の的となり、周囲を虜にしていく。小夜子に激しい憧れを抱く由似子(本仮屋ユイカ)もその一人である。始めは単なる政略結婚と考えていた暁もまた、小夜子に惹かれていく。だが、暁の義理の弟にあたる涼(勝地涼)だけは、そんな光景を一人冷静に眺めていた。ある日、校内で教師に襲われた小夜子は、偶然通りかかった涼に助けを求める。涼は、小夜子の目にただならぬ光を見るのだった。激しくなる暁の恋心とは裏腹に、それからの小夜子は、むしろ涼に気のあるそぶりを見せるようになっていく。一方で、由似子の姉、鷹子(市川実日子)は、叶家の歴史と家宝に興味を抱き、調査を進めていた。叶家は天女の末裔であるという天女伝説に、鷹子は心躍らせる。だが、次の瞬間、鷹子は、小夜子を襲った高校教師の変わり果てた姿を発見する。小夜子の周囲に、暗い影が差し始める。小夜子を利用しようと企んだ者達は、次々と命を落とし、ついには、暁と涼、由似子までをも巻き込んでいく。