「タンゴ(1992)」のストーリー
セスナ機乗りのヴァンサン(リシャール・ボーランジェ)は、妻の浮気を知って飛行機で追いつめて相手の男を殺してしまう。そして妻のエレーヌをも得意の曲芸飛行で空から放り出して葬ってしまった。だが裁判では不思議にも無罪を言い渡される。ポール(ティエリー・レルミット)は、何回目かの浮気がバレて、愛妻のマリー(ミュウ・ミュウ)に愛想をつかされて家出されてしまった。マリーに逃げられて一か月、傷心のポールは叔父のエレガン(フィリップ・ノワレ)の元に相談に来る。エレガンは女好きだが生涯を独身で通し、つねづね男と女は一緒に暮らせないと考えていた。彼はヴァンサンの裁判で証拠物件を隠し、無罪へと導いた裁判官だった。「妻のことが頭から離れない。こんなことで気をもむくらいなら、いっそ死んでくれたほうがましさ」とのポールの言葉に、エレガンはヴァンサンにマリーを殺させようと思い立つ。弱みを握っているヴァンサンが断るはずがなかった。いまいち煮え切らないポール、いやいや殺し屋役を引き受けたヴァンサン、いつになく嬉々とするエレガン。三人組の奇妙な殺人計画の旅が始まった。「国境なき医師団」に参加しているマリーの後を追って、一行はセスナで一路アフリカへ。ついにマリーを捜し当て、ヴァンサンは拳銃で彼女を撃ち殺す。これで永遠に自由、かつ幸福になれたと思ったポール。だが本当は途方に暮れ、全く幸せではなかった。男は女なしでも暮らせないのだ。三人で旅をしている時にカーステレオから流れていたタンゴのメロディーが、ポールの背後で鳴り始めた。そう、タンゴは1人きりでは踊れない。しかも男と女でなきゃ始まらないんだ……。やっと悟ったポールの前にマリーが微笑みながら現れた。全てはエレガンの仕組んだ狂言だったのだ。