「浅草物語」のストーリー

終戦の翌年。--戦災で両親を失って以来、二人の妹弓子とみどりを抱えて浅草のバアに働く千代子は、常連のブローカー赤木にいつしか惹かれるようになった。復員して妻の再婚をしり、半ば自暴自棄の赤木は、女そのものを信じていない。千代子がすべてを許した翌日には、もう彼女の前に現われなかった。傷心のあまり、千代子は発狂し、そして死んだ。まのあたりその一部始終を視た弓子は、子供心にも男を憎み、けっして「女」になるまいと誓う。--七年後、彼女は公園でも名の通ったズべ公となっていた。ふと知りあった学生浜村の純真な思慕をも、ただそれを利用しようと考えるばかりだ。かえって、今は六区の踊り子となった妹のみどりが浜村を慕っている。或る日、仲間のサリーが金をすり損って相手に捉まったときき、連戻しに出かけた弓子は、当の男が赤木であることに愕いた。すでに成心をとりもどしていた赤木の態度はりっぱであった。それが千代子の妹とは知らないまま、彼は弓子に惹かれる。復讐を誓いながら彼女もまた、赤木を愛するようになる。浜村に鋭く詰られたこともあって、いつか変った彼女のありさまに仲間は離れた。姉の命日--クリスマスの夜、意を決した弓子は、言問橋畔に浮ぶ蒸気船くれない丸に赤木をさそい、毒薬を口にふくんで接吻する。狼狽する赤木もろとも弓子も死んだ。彼女の愛と憎しみの解決は、それより他には、どうすることも出来なかったのである。