「カンバセーション 盗聴」のストーリー

サンフランシスコのユニオン広場、ビルの谷間にあるこの市民の憩の場所には、いつもギターを手にした若者や暇をもてあました老人がたむろしていた。よれよれのレインコートを羽織った、どこといって特徴のない中年の男の眼が、広場を散歩している1組の若い男女に注がれている。だが、仲むつまじいカップルを監視しているのはこの中年男だけでなく、近くのビルの窓と広告塔の上から望遠レンズを持った男たちが2人の姿を追い、大きな紙袋を下げた別の男も、2人のすぐ近くをウロウロしている。男は、アメリカ西海岸ではその道一番の腕ききといわれるプロの盗聴屋ハリイ・コール(ジーン・ハックマン)だった。彼は依頼主の注文を受け、例の若い男女の会話をテープに収めているのだ。平凡な恋人同志の語らいに、助手のスタン(ジョン・カザール)は立腹したが、ハリイは黙々と仕事を続ける。長年この商売一筋に打ち込んできた彼は“好奇心を捨てること”を鉄則としてきた。その日の仕事が済むと、ハリイは久しぶりで恋人アミー(テリー・ガー)を訪ねた。アミーはハリイから毎月の生活費を貰うほどの間柄でありながら、彼が何者か、どんな仕事をしてどこに住んでいるのかさえ知らなかった。他人のプライバシーに入り込むことを商売としている彼は異常なまでに自分のプライバシーを明かさなかった。この夜、彼女がいろいろな質問をするためにハリイは怒ってアパートを飛びだした。翌日、男女の会話を収めたテープを依頼主に渡すために豪華なオフィスを訪ねたが、当の依頼主である専務は不在だったため、秘書のマーティン(ハリソン・フォード)が引きとめるのをふりきって、そのオフィスをでた。そのときの秘書の脅しのセリフが、好奇心を捨てたはずのハリイに疑惑を抱かせた。古い工場を改造した仕事場に戻ったハリイはそのテープに耳を傾けた。そして以前は雑音しか聞こえなかった部分から“彼に殺されるかも知れない”といっている男の声をキャッチした。若い恋人たちは殺人事件に捲き込まれようとしているのだろうか?数日後、サンフンシスコでは監視保安技術業者、即ち盗聴屋の大会が開催され、それに出席したハリイは同業者のバーニー・モラン(アレン・ガーフィールド)とその友人たちの一行を仕事場に招いた。だが、モランがいたずらのつもりでハリイに隠しマイクを仕掛けたためすっかり気を悪くした彼は、皆を仕事場から追い払った。あとにはハリイと、モランが連れてきた女メレディス(エリザベス・マックレー)だけが残った。メレディスは、ハリイを隅のベッドに誘った。数時間後、ハリイが眼を覚ましたとき、女は問題のテープと共に消えていた。そして依頼主から、テープを入手したので約束の金を払うからオフィスまでくるようにとの電話が入った。今度は専務(ロバート・デュヴァル)がいて、部屋に飾ってあった写真から、ユニオン広場の2人連れの女が専務の妻(シンディ・ウィリアムズ)であることを知った。妻の不貞を調査させた専務が、自分を裏切った妻と相手の男(フレデリック・フォレスト)を始末しようというのだろうか?ハリイは、テープに収められた会話の中で、男と女が次の逢いびきの場所らしい“ジャック・ター・ホテル、773号室、日曜の3時”といっていたことを思い出す。自分が盗聴したテープのために殺人事件が起こるのではないかと不吉な思いに駆られたハリイは、日曜日、同じホテルの隣りの部屋を借り隣室を盗聴したがテレビの声しか聞こえなかった。突然、ベッドで眠っていたハリイは鋭い悲鳴で眼を覚ました。恐る恐る隣室に忍び込んだハリイは、隅々まで調べたが殺人が行われたような痕跡は発見されなかった。だが、トイレのノブを回すと、おびただしい血が逆流してきた。翌日の新聞は、例の専務が交通事故で死亡したことを報じていた。