「皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇」のストーリー

“世界で最も危険な街”とされるメキシコの都市シウダー・フアレスは、およそ100万の人口に対し、年間3000件を超す殺人事件がある。殺人事件の現場で証拠品を集める地元警察官リチ・ソトと同僚たちは、報復を恐れて黒い覆面を被って事件現場に出動する。メキシコでは3%の犯罪しか捜査されず、99%の犯罪は罪に問われず放置される。事件の背後にある強大な力を持つ非合法の麻薬密輸カルテルは、警察組織や軍を買収し、捜査を阻む。組織に従わないものは殺される。リチは現場検証で証拠物品を集めるだけ。1年間で彼の同僚警官が4人も殺害された。国境をまたいだアメリカ合衆国の都市エルパソは年間殺人件数5件で、全米で最も安全な街だ。家族はリチに渡米を強く勧めるが、彼は故郷を想い、街を少しでも平和にしたいという信念で、決して離れようとはしない。メキシコだけでなくアメリカでも人気を集める音楽ジャンル“ナルコ・コリード”で、麻薬カルテルのボスたちは英雄として讃えられている。ナルコ・コリードの歌手、エドガー・キンテロは、その人気に乗ってのし上がってきた。ボスたちは彼に自分の武勇伝を話し、歌にしてもらう。ボスたちは歌が気に入れば、エドガーに1万ドル以上のチップを払う。エドガーが所属するバンド“ブカナス・デ・クリアカン”がリリースしたCDのセールスは10万枚を超えている。10代に人気のこの音楽ジャンルの歌詞は、殺し、拷問、誘拐など麻薬密輸にまつわる暴力的なもの。麻薬王たちを英雄視するその音楽はメキシコ国内では放送禁止となっているが、彼らのアルバムは全米のウォルマートでも販売されビルボードにもランクインしている。エドガーはロサンゼルス育ちのメキシコ系アメリカ人で、実際にはインターネットでしかメキシコの麻薬カルテルのことを知らない。彼は本当のギャングたちに会いたいと、メキシコ最大の麻薬密輸組織、シナロア・カルテルの本拠地クリアカンへと旅立つ。