「アルセーヌ・ルパン」のストーリー

深夜のパリ、警察署の警報がけたたましく鳴った。富豪フルーネー・マルタン家の盗難だ。当時パリ中を震撼している怪盗アルセーヌ・ルパンの仕業であることは明らかだ。時を移さず名探偵ゲルシャール(ライオネル・バリモア)が駆けつけた。自動車上に縛られた怪しい紳士、それをルパンとにらんでマルタン家へ連行する。だが、それは当時パリ社交界の花形シャルムラース公爵(ジョン・パリモア)であることが判って名探偵はしょげる。神出鬼没のルパンの大胆な犯行は、その後連日のようにつづく。さすがの名探偵ゲルシャールも、愚弄されたかたちである。彼はあくまでシャルムラース公爵をルパンとにらんでその根拠をつかもうとあせるが、公爵は決して尻尾を出さない。そして、ルパンが仇敵のようにつけねらう戦時成金のガルーネー・マルタン氏(タリー・マーシャル)の別荘を中心に、名探偵と怪盗の知恵くらべが始まる。探偵側が女のスパイを使えば怪盗側は偽警官を使い、いづれも虚々実々の戦法にしのぎをけずるが、探偵側にいつも歩がない。ルパンはついに白昼、ルーブル博物館から名画「モナ・リザ」を盗み出すと大胆不敵に予告する。博物館は蟻の這出るすきもないまでに厳重に警戒の柵をはりめぐらされるが、名画は予告通り盗み出されてしまう。ゲルシャールは死に物狂いになってルパンの根城をつき、シャルムラース公爵の仮面を剥ぐことが出来たが、その時はゲルシャールの最愛の一人娘が人質としてルパンの手中にあった。名探偵と怪賊の最後の取り引きは、人間対人間の温かいものだった。かくてゲルシャールの情けによって、アルセーヌ・ルパンはいづこともなくその姿をくらましたのである。