「速成成金」のストーリー

バッグス・レイモンドは貨物自動車運転手だった。鉄骨や砂利などの建築材料を運搬して歩くうちに彼は建築事業を食い物にする暴力団を作ったら素晴らしい金儲けが出来るに違いないという考えをある日突然思いついた。レイモンドは肝っ玉も太かった。彼はこの思いつきを実行する決心を固めて、トラック業のネイルス・マーケーと話をつけトラックを種に暴力売りの事業をはじめた。日ならずして全市のあらゆる方面に彼らの魔の手は伸び、バッグス・レイモンドの名は暗黒界の帝王として恐れらるるに至った。彼の成功の裡にはデイジーという情婦の内助の功が興って力があった。司かしレイモンドは勢力を得ると更に社交界へ乗り出したいという野心を抑え得なかった。デイジーが絹と毛皮と宝石とに身を飾ってもレイモンドの心は満たされなくなった。彼は生まれついた社交界の貴婦人を我が物として抱きたくなった。彼は狡計を用いて建築請負業ケネス・ストーンを抱き込んで一味とし、彼の紹介で社交界へ顔出しをするようになり、その妹のドロシーに惚れて彼女を追いまわした。勿論デイジーは弊履のごとく棄てて顧みなかった。兄弟分のネイルスにもつき合わなくなった。だがいったん染めた泥足は洗うことを許されない。仲間を棄てることは許されない。ネイルス一味はレイモンドを血祭にあげる機会を待った。一方レイモンドは求婚を斥けられたばかりかドロシーは他の男と結婚するのだといって嘲笑を浴びせられた。失恋と野望の挫折を憤ったレイモンドは古巣に戻って、結婚式場からドロシーを誘拐するのに手を貸せとネイルスに計らった。表面快諾したネイルスはドロシーの結婚式の夜、レイモンドを葬った。