「頭痛鉢巻」のストーリー

ヴェールは現在に生きるモダーン・ガールであった。彼女にとって過去は問題ではない、ただ現在あるのみであった。彼女が夫として選んだウィリアムに就いても、このセオリーは慣行された。ヴェールは、ウィリアムが過去を告白しようとした時、それを止めて、2人は結婚式を挙げてしまった。彼女には信ずる夫に過去の秘密があろうとは、少しも思い及ばなかったのであるが、実はウィリアムは、かつてマリーという女と結婚し、既に離婚した仲なのである。偶然にもヴェールとマリーとは女学校時代の同窓で、ヴェールは夫の旅行中、久しく逢わなかったマリーを我が家へ招待したのが間違いの基であった。マリーは睦じい夫婦仲を見るにつけウィリアムの心を再び自分の方へ向かせようと努力しはじめ、無邪気だったヴェールの心にも嫉妬が芽生え、コレジオ夫人というイタリアの女優が現れてウィリアムに近づいてからは、尚更彼女の心配は増したが、結局、夫は自分のみを愛していることがわかり、彼女の心配は一掃されたのである。