「ジュリアス・シーザー(1953)」のストーリー

紀元前44年、ローマはジュリアス・シーザー(ルイス・カルハーン)が終世執行官となるに至って、貴族たちの間に政治的憤懣が高まった。シーザーの反対派はかつて彼が葬り去ったポンペイの追従者たちで、一方シーザーの味方は彼に熱烈な忠誠を誓う軍隊の隊長マーク・アントニー(マーロン・ブランド)であった。その中間に理想主義者たちがおり、その指導者は哲学者のカトーだったが、彼の自殺後、彼の娘婿ブルータス(ジェームズ・メイスン)がこの中間派の第一人者だった。ルペルカリアの祭の日、シーザーは競技場へ向かったが、その途中、路傍の占者から3月15日に気を付けよと呼びかけられた。競技場でアントニーはシーザーに3度王冠を捧げ、シーザーは3度それを拒んだ。ブルータスはシーザーが王冠を拒みながらも心中それに惹かれているのを見てとり、危険なものを感じた。折も折、シーザー打倒を指導するカシアス(ジョン・ギールグッド)がブルータスを言葉巧みに抱き込みにかかっていた。カシアスは公正と誠実さで民衆に人気を持つブルータスを利用しようとしていた。3月14日の夜、激しい雷雨をついてカシアス、カスカ(エドモンド・オブライエン)ら謀反一味は、彼らの計画をブルータスに打ち明けるため彼の家の庭に集まった。ブルータスはシーザー暗殺には賛成したがアントニー殺害には反対した。一味が帰ったのち、ブルータスの妻ポーシャ(デボラ・カー)は物思いに沈む夫を見て何か気がかりであった。一方シーザーの妻カルプルニア(グリア・ガースン)もその夜は不吉な夢から目覚め、夫に今日は元老院へ行かぬよう切願した。しかしシーザーは元老院に王冠が自分を待っているものと信じ、振り切って出かけた。謀反者たちは計画どおりシーザーを殺害した。ブルータスは参集したローマ市民に向かって、共和制ローマをシーザーの野心から守るためだったと説いてかれらの支持を得た。しかしつづいて登壇したアントニーが無類の雄弁をふるってシーザーの死を悼んだので熱狂した群衆は暴動化した。ブルータスらの謀反者は逃れ去り、ローマはアントニーとオクタヴィアスの支配に帰した。謀反者たちの間は円満に行かず、就中、ブルータスとカシアスが対立したが、ポーシャ自殺の悲報に和解し、ハイリポの平原でアントニーの軍勢と決戦を挑む決意を固めた。会戦はアントニー軍の決定的な勝利に終り、カシアスもブルータスも、自らの命を絶った。ブルータスのそばに立ったアントニーは、ブルータスこそ最も高潔なローマ人だったと、追悼の言葉を送った。