「将軍(1980)」のストーリー

1598年、オランダからアメリカを目ざして出航した探険商船エラスムス号が、暴風雨に遇い難破した。日本の伊豆の漁村・網代に漂着した航海士ブラックソーン(リチャード・チェンバレン)は、領主の矢部(フランキー堺)と甥の近江(目黒祐樹)に保護され、エラスムス号は押収された。東に虎長(三船敏郎)、西に石堂(金子信雄)という二大勢力がしのぎをけずる中で、ブラックソーンの漂着は、大きな波紋をなげかけた。航海士という仕事から“按針”と名付けられたブラックソーンは、この規律を重んじる野蛮人に、はじめは戸惑いを感じた。やがて虎長の命令で大阪へ寄越することになったブラックソーンは、大阪城で初めて虎長と会い、虎長の迫力に圧倒された。彼は、ヨーロッパの情勢を熱心に語り、その結果、虎長はポルトガルが秘めている交易の裏の野望を知る。ブラックソーンの落ちついた態度に親近感を抱く虎長。そして、ブラックソーンはこの席上で通訳を勤めた美しい女性、まりこ(島田陽子)を知る。彼女は、広松(安部徹)の息子、文太郎(高松英郎)の妻であった。大阪城には陰謀が渦巻き、5人の大老の摂政会議も虎長派と石堂派にはっきり別れていた。特に他から抜きん出ていた虎長に対しては秘かに暗殺計画がねられていた。まりこ、ブラックソーン、虎長には連帯感が生まれ、やがて、度重なる石堂側の追撃を受けながら彼らはその感情を深めた。まりこの手助けで日本語を理解しようとするブラックソーンは、突然襲った大地震から虎長の命を救い、家臣200人、二千石の地位をさずけられ、帯刀を許された。夫、文太郎との愛がすっかり冷えていたまりこは、ブラックソーンへの愛を感じた。しかし、石堂側の猛襲を受けた際、まりこはブラックソーンの犠牲になり自ら死んでいった。残された手紙には、それが自分の運命であり、そのことで、ブラックソーン、そして虎長の役に立ちたかったと記されてあった。やがて世の中は関ヶ原の戦いにと突入していくのだった。