「恋する彼女、西へ。」のストーリー

東京の建築設計会社に勤務する33歳のキャリアウーマン、杉本響子(鶴田真由)は失恋の痛手からか仕事もうまくいかない。そんな時、後輩男性社員の尻拭いで広島に出張することになる。8月3日。照りつける日差しの下、響子は突然、「ここはどこですか?」と若い男に話しかけられる。短髪で長身、白い海軍服を着たその男の名は矢田貝亨(池内博之)といった。あまりにも時代錯誤な矢田貝に関わりを持ちたくないと思った響子はその場を去ろうとするが、バイクと接触事故を起こした矢田貝を病院に連れていく。響子は彼の治療費を支払って帰ろうとするが、なぜか矢田貝のことが気にかかるのだった。矢田貝は、昭和20年8月6日の原爆投下の歴史的遺産、原爆ドームを見て錯乱状態になっていた。その夜、泊まる場所がないという矢田貝を、響子は自分のホテルの部屋に泊める。矢田貝は、昭和20年の8月3日、母の見舞いで病院に行くために、広電に乗り、眩しい光を感じた瞬間、60年後の現代へタイムスリップしたようだと響子に語る。その翌日、響子は慰問袋の落し物の新聞記事を見つけ、広電の忘れ物センターへ向かうと、それは間違いなく60年前のものであった。その後、記念イベントで走っている旧型の広電に乗った響子は、車内で再び60年前の外食券を見つける。翌5日。戦前の車両と新型車両がすれ違う時に出来るひずみによってタイムスリップすることを確信した響子は、矢田貝の言葉をようやく信用するが、次第に彼のことが気になり出し、やがてお互いに意識するようになっていった。ところが、響子の口から歴史の事実を聞きながらも、女子供を助けるために過去へ戻ろうとする谷田貝の決心は固かった。そして翌6日、運命を変えられないジレンマに悩みつつ、谷田貝は再び広電に乗り込むのだった……。