「アンリ・カルティエ=ブレッソン 瞬間の記憶」のストーリー

2004年8月、アンリ・カルティエ=ブレッソンの訃報が世界中を駆け巡った。享年95歳。彼はロバート・キャパらとともに、写真家集団“マグナム”を設立し、小型カメラのライカを片手に、スペイン内戦前夜やパリ解放、ガンジーの死など歴史的瞬間を撮った報道写真の先駆者だった。また、写真集『決定的瞬間』で独自の写真美学を確立し、世界中の写真家に多大な影響を与え、写真を芸術の域に高めた。ヨーロッパ、アメリカ、インド、中国、日本など世界中を旅した彼は、その“激動の20世紀”の瞬間を捉え続けた。人前に顔をさらすのを嫌い、自身についてほとんど語ることのなかった彼は、人生の最期に初めてその半生と作品についてこの映像の中で語っている。映画は当時93歳のカルティエ=ブレッソン本人と、親交のあった写真家エリオット・アーウィットや劇作家アーサー・ミラーなどの貴重なインタビューで構成されている。青春のメキシコ、捕虜収容所の脱走、戦時下のパリ、助監督もつとめた映画監督ジャン・ルノワールとの出会い、“マグナム”の仲間たちとの思い出、マリリン・モンロー、ココ・シャネル、トルーマン・カポーティ、サルトルとボーヴォワールら20世紀の“顔”を撮影したエピソード……。そして、ついにカルティエ=ブレッソン本人の口から“決定的瞬間”の謎が明かされる。写真集『決定的瞬間』のフランス語版タイトルの意味は“逃げ去るイメージ”。そこには歴史的瞬間だけでなく市井の人々のなにげない日常の瞬間も捉えられている。カメラは、すべての人生の中に“決定的瞬間”を見いだす彼のまなざしそのものだった。彼はその瞬間を生き生きと語り、そして微笑む。そこには人生への愛が満ち溢れている。

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