「tokyo skin」のストーリー

「没法子(メイファズ)……仕方がない」が口癖の周は、北京から東京に出てきて5年、中国人仲間の馬、湧とともに始めた“周外国人相談室”を日々の生業としていた。しかし、相談室とは名ばかりで、実際は盗品売買からパチンコ詐欺、パスポートの偽造にいたるまで金になることなら何でもやり、荒稼ぎをしては酒に浸って不特定の女と寝る自堕落な毎日を送っている。苛立ちと焦りが周の心を支配していた。周にご執心の陽子は、過去に一度関係したという理由だけで、恋人気取りで彼を追いかけ回している。そんな陽子の前に突然、彼女とニューヨーク一年間同棲していた一雄が姿を現した。画家として芽が出ずジャンキーになってしまった一雄は、陽子を追って日本へ戻ってきたのだった。一雄が偶然空港で知り合ったパキスタン人のアリは、故郷での裕福な暮らしを捨てて東京にやってきたが、出稼ぎ労働者の手配師に逆らったために夜の街に放り出された。周の前には、“周凱孟(シュウカイモン)”という人物を探す若い女・京子が現れる。打算から京子に近づいた周は、侮蔑の言葉を投げつけられたことで逆に自分の胸の内をさらけ出し、ふたりの仲は急速に深まっていった。事務所を売り払い、車のディーラーとして新しい生活を始めた周は、周凱孟と出会い、京子が誰とでも寝るいかがわしい女であることを告げられた。自暴自棄に陥った周は、居場所を求めて夜の街を徘徊する。堂々めぐりのように走る続ける山手線のシートには、惚けたように座り込む周、そして京子、陽子、一雄、アリの姿があった。