「月はどっちに出ている」のストーリー

在日コリアンである姜忠男(カン・ユンナム)の勤める金田タクシーは、仕事を離れれば同級生である世一が二代目社長としてきりもりしていたが、従業員は元自衛隊員の新人・安保、忠男にまとわりつくパンチドランカーのホソ、ヤンキーあがりのおさむ、強欲な谷爺、出稼ぎイラン人ハッサンなど、きちんとした会社勤めには不向きな連中ばかり。忠男もまた北だ南だ、統一だとかまびすしい周囲には目もくれず、もっぱら女の子を口説くことに忙しかった。ある日、彼は母・英順の経営するフィリンピン・パブで働くことになった、妙な大阪弁を喋る新顔コニーに出会う。忠男はあの手この手でコニーを口説くが、たくましい彼女には通用しない。だが半ば強引にコニーを抱いた忠男は、ちゃっかり彼女の部屋に引っ越しまでしてしまった。そんな二人の周辺も、また日々変化していく。世一はゴルフ場投資で騙される。洗車係のハッサンは勝手に車を動かし、逮捕されてしまう。目に余り言動のおかしくなったホソも行方をくらまし、故郷の新潟で保護される。さらには英順とコニーが大喧嘩をやらかす。忠男もまた、訳知り顔の若い日本人サラリーマンの客が無賃乗車で逃げ出し、必死で追いかける羽目にあう。職場も恋愛も末期的症状になってきた。煮え切らない忠男に見切りを付けたコニーは、寂しげに見送る忠男を残し、新しい店に移っていく。世一の会社には、明らかにヤクザと分かる金融業者・紺野が現れ、以後ヤクザが監視の目を光らせるようになる。思いあまった世一は会社に火をつけるが、そのとたんに火を消せとわめき散らす。そのあまりのバカバカしさに大笑いしてはしゃぎまくる忠男。月日がたち、忠男はコニーの働く店へ車を走らせ、『あの女は悪い病気を持っているぞ』と匿名電話をかける。そのまま待ち構えていると、案の定、追い出されたコニーが彼の前に現れる。コニーは呆れながらも、澄ました表情で彼女を迎える忠男の車に乗り、二人は東京へ戻っていく--。