「昨日にさようなら」のストーリー

まだ肌寒い早春のイギリス。ロンドン行きの車中で青年(レナード・ホワイティング)は美貌の婦人(ジーン・シモンズ)に出会った。青年はこの日22歳の誕生日を迎えて胸おどらせていたが、彼の天衣無縫の行動にも婦人はなかなか打ちとけない。ロンドンに着いても青年は婦人から離れようとはしない。デパートでは茶目っ気をふりまいて皆を笑わせる青年に、婦人もいつしか笑ってしまった。しかし、婦人はすぐに心の扉を閉じてしまう。歩き去ろうとする婦人に青年は足早に追ってきては、話しかけ、ショーウィンドウをのぞき込む婦人を見て、彼はむりやり店の中に引きずりこむと美しいスカーフを選んでプレゼントした。婦人のお母さん(イヴリン・レイ)は家までノコノコついてきた青年を一目みて全てを了解する。「お前はあの青年とベッドを共にしてもあるいはきれいに別れても後悔するだろう」と婦人にさとした。青年のその率直さ、明るく優しい瞳は婦人に、ほんとうに自由で純粋な愛を思い出させた。不動産屋をうまくごまかして、マンションの一室を借りた青年はそこで、婦人と熱い抱擁をかわした。一度だけの思い出にしようとする婦人に、無垢な青年の心は傷ついてしまう。「どうして?」「私には家庭があるし、夫を愛しています」さびしそうな青年を置いて、去ってゆく婦人の心に、日常性から脱けえない悲しみがわいてきてしまう。ロンドン駅のプラットホームに駆けつけた青年はやっと車窓に横顔をむけた婦人を見つけ出した。「愛しています」青年の言葉をさえぎる婦人の頬に一筋の涙が光った。走りだした列車を追いかけながら涙を流す青年。スピードを増して走り去った列車を青年はいつまでも見送っていた。(松竹映配配給*1時間32分)

今日は映画何の日?

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