「極地の青春」のストーリー

北極圏ラプラドルのイヌイット集落から百里も離れたところに無線電信局がある。そこには白人の技師ディンスモアがイヌイットの下男を一人使って、2年間の寂しい生活を送っていた。ある時飛行機の故障で不時着陸をした一組の男女があった。男はジェームズ・フェルトン卿で女は許婚のアイリーン・キャムピオン、2人はモントリオールへ行く途中だった。彼らが無電局に宿泊を乞うたとき、2年振りで白人の、しかも非常に美しいアイリーンを見たディンスモアは一目で彼女を恋してしまった。そこで彼はフェルトンの頼んだ電信の代わりに偽りの電信を発し、2人を抑留しておいた。アイリーンに対する彼の挙動があまりに厚かましいので、フェルトンは彼の精神に異常があるものと信じ、一時も早くここを逃げ出そうと計った。しかし心からフェルトンを愛していないアイリーンは、むしろ正直で男らしいディンスモアの方に段々ひきつけられていくのだった。彼女はついにディンスモアと結婚する気になった。ところが次の日、かつて許婚であったが2年前すげなくディンスモアを振り捨てた女クララ・ウィルスンがどうした訳かはるばるとこの極地を訪れて結婚を迫った。これでアイリーンと彼の結婚も望めなくなった。彼女はフェルトンと共に、クララの乗ってきた小舟で無電局を去った。翌日ディンスモアのところへ一通の手紙が着いた。それは彼の伯父の遺言によって、ディンスモアは巨万の富と爵位を受け継いだ報せである。これでクララが彼を追っかけて来た動機が分かった。ディンスモアは欣然としてクララとの嫌な結婚を破棄し、アイリーンの後を追って2人の約束を果たしたのである。