「キッチン(1989)」のストーリー

一人っ子のみかげは、幼い頃両親を亡くしてから祖母と二人暮らしだった。その祖母も他界し、いつしかみかげは台所の冷蔵庫の脇で寝るようになっていた。台所の好きなみかげにとって、そこが一番落ち着ける場所だった。一人ぼっちになったみかげは友人の雄一の厚意で、彼のマンションに引っ越すことになった。ある晩みかげは雄一の母・絵理子を紹介されるが、それは女装した父親の姿だった。こうしてみかげと雄一、絵理子の同居生活が始まった。絵理子はゲイバーのママで夜は遅く、雄一も昼夜が逆の生活だったが、みかげには居心地がよかった。そしてなによりみかげはここの台所が気に入っていた。ある日料理教室のアシスタントとして働くみかげの元へ、雄一の恋人・真美が怒鳴り込んできた。みかげと雄一が同棲していると勘違いしたのだった。みかげは雄一の家を出、同僚の多美恵とアパート暮らしを始めた。ある晩ゲイのちかがみかげを訪ね、絵理子が店を辞めて精神病院に入院したことを教えてくれた。みかげと雄一は絵理子を見舞うが、彼女は意識で女になっているので神経が混線してしまったのだった。雄一の誕生日にみかげがマンションを訪ねたところ、絵理子も麦原医師を伴って帰ってきた。しかも麦原は病院を辞めてプラネタリウムの仕事につき、絵理子と暮らす決心をしていた。みかげと雄一の関係も友人から恋人へと変わり、四人はマンションで同居することになった。