「俺は水兵(1929)」のストーリー

小男のロロはある小さな劇場の魔術師で催眠術を得意として舞台に出ていた。彼の出演していた劇場は港にあったので来る客も自然船員や水兵達が多かった。1日彼が舞台で演技中多勢の客の中から俗称「間抜け」のマクダフと言われている水兵が飛び出しロロをやりこめようとしたが、あべこべに催眠術にかけられ満場大喝采裡にマクダフは面目玉を潰してしまった。マクダフはこれを遺恨に思って機会さえあらばロロに復讐しよう狙っていたがロロはそれと知っていつもすばしっこく体を交わしていた。或る日、街上でマクダフに邂りあったロロは咄嗟の機転で水兵服に着替え彼の眼から逃れようとした、が折から巡回中の士官に発見され水兵にならねばならぬ羽目となってしまった。そこでロロはマクダフと同じ所属部隊に入ることになったがこれを見たマクダフは大喜びでことごとに彼を虐めては悩まし始めた。この2人は共に写真屋のシャーレイを恋していたので至る所で鞘当てを演じ2人の仲は益々険悪になった。ロロはあまりに虐められるのでなんとか仕返しをしようと機会を窺っていた。遂にその日が来た。海軍の大仮装会――これはロロにとって絶好のチャンスであった。彼は病気を口実に欠席すると称していたが、その実女に扮して出席した。彼はマクダフに近づき得意の手を用いて催眠術をかけた。マクダフは消防夫になったつもりでホースを引っぱり出し綺麗に着飾った仮装会の人々をビショ濡れにしてしまった。催眠術から醒めたマクダフは長官に平蜘蛛の如く謝り且つ陳弁大いに勉めたが聴かれなかった。しかし間もなく事実が判明してロロの罪が露見し彼は免職となった。その夜、海軍工将が火災を起し重大事に至ったのでロロも消防に参加し大いに働いたが、高層なる屋上で人命救助中、身体極まり自分の身が危険にさらされるような次第となった。これを知ったマクダフは日頃の恨みも忘れ彼を救い出した。天晴れ手柄をあらわしたマクダフが意気揚々としてシャーレイの許を訪れ彼女の愛をかち得んとした時すでにそこにはロロが姿を現わしていた。彼はまたもやロロに出し抜かれたのであった。