「薔薇色のロレーヌ」のストーリー

ルイ・コンピエーヌ(M・シモン)は、姉のカロリーヌが死んで以来、従順な召使いパスカル(P・プレボワ)と二人暮しで、一切外出はしない、自然科学を研究する老科学者だった。ある夜、ロレーヌ(P・ダルバンビル)という少女がスペインからヒッチハイクの途中、一晩の宿を乞うため、昔、学者で彼女の父とつきあいのあったコンピエーヌを訪ねてきた。ロレーヌが、最近なくなった姉のカロリーヌとそっくりなのでコンピエーヌは嬉しくなった。姉の思い出は年老いた彼にとって忘れ難く、今では生きるよすがとなっていた。ロレーヌも住みごこちがよさそうなこの家に当分落ちつくことにした。コンピエーヌは姉の若い頃の服をロレーヌに与え、昔姉と、一緒に踊ったレコードに合わせてダンスをしたり、海辺での思い出を秘めたスライドを見せたりした。彼の心は薔薇色にときめきいつしかロレーヌの姿が姉に変わっていった。ある朝、ロレーヌを起こしに部屋に入ると、見知らぬ青年がベッドにもぐりこんでいた。彼女と一緒にヒッチハイクをしていた恋人のエチエンヌ(A・リボルト)だった。コンピエーヌは怒鳴りつけたがそれは自分のやきもちと淋しさだと判ったとき、ちょっぴりうらやましいまなざしで二人をみつめた。ロレーヌとエチエンヌがそわそわしているので尋ねると、明日はロレーヌの十八歳の誕生日だった。コンピエーヌは二人の若い友人たちを呼んで盛大なパーティを開いてやろうと思った。早速、あわただしい準備か始まった。当日部屋には、豪華な食事、酒、それにワルツやロックの音楽が溢れ、我を忘れてみんな楽しんだ。だが躍動する若い生命を前にしてコンピエーヌはふと淋しさを感じた。自分の老いた体をみると、死に脅やかされ、いたたまれなくなった。一人こっそり部屋に戻ると、青酸カリのビンをみつめた。だが物質は滅びるが、精神こそ不滅であり、若さだという認識がわいたとき、眼の前の薬も水に見えてきた。パーティも終りロレーヌもエチエンヌも家を去っていった。コンピエーヌに残されたものは、姉カロリーヌの思い出と古い家、そして確かに老いさらばえていく肉体と若い精神だった。森閑とした家のまわりは、もう乳白色のもやにつつまれた夜明けが近づこうとしてた。